国語の読解力は、国語だけのために必要な力ではありません。

むしろ、あらゆる学問の土台になる力だと考えた方がよいでしょう。

難関大学を目指す場合はもちろん、その後に司法試験、公認会計士、税理士、医師国家試験、薬剤師国家試験など、専門性の高い試験に挑戦する場合にも、文章を正確に読む力は欠かせません。

専門的な勉強では、ただ知識を暗記するだけではなく、参考書や問題集、解説、資料に書かれている内容を読み取り、自分の頭の中で整理していく必要があります。そのときに支えになるのが、読解力です。

私は高校生に数学や理科を教えることもありますが、その中でよく感じることがあります。

国語の読解力が弱い生徒は、理系科目でも伸び悩みやすいのです。

数学や理科にも読解力は必要になる

高校生の数学では、参考書の解法を読み、問題の考え方や解き方を身につけていきます。

ところが、読解力が弱い生徒は、参考書に書かれている大事なポイントを読み落としてしまうことがあります。

式の変形だけを見ている。
数字だけを追っている。
しかし、解説の中で「なぜそう考えるのか」と説明している部分を読み取れていない。

そういうことが少なくありません。

たかだか100字程度の説明でも、そこに重要な条件や考え方が書かれている場合があります。けれども、読み方が浅いと、その100字を読み飛ばしてしまいます。

そういうとき、私は生徒にその部分を音読させることがあります。

声に出して読むと、目だけで読んでいたときには通り過ぎていた言葉に気づくことがあります。

「あ、ここに書いてありましたね」

そういう反応が返ってくることもあります。

読解力のある生徒は、こうした読み落としが少なくなります。参考書の解説に書かれている意図をつかみやすく、解き方の流れも理解しやすいのです。

数学でも理科でも、学年が上がるほど、単なる計算力だけでは対応できなくなります。

問題文を正確に読む。
参考書の解説を読み取る。
条件を見落とさない。
何を求められているのかを理解する。

こうした力が、成績に関わってきます。

難関大学入試でも、国語力はあとから効いてくる

大学入試でも、読解力は大きな意味を持ちます。

たとえば難関私立大学では、英語が非常に難しいため、一見すると英語力の差が合否を分けるように見えます。

もちろん、英語力は重要です。

しかし、合格を争うレベルの受験生になると、英語力はある程度高い水準まで達していることが多くなります。そこで差がつくのは、英文を読む以前の、文章そのものを論理的に読み取る力である場合があります。

英語の長文でも、結局は「何が主張で、何が具体例なのか」「前後の文がどうつながっているのか」「筆者は何に反対し、何を述べようとしているのか」を読む必要があります。

これは、国語の論説文や説明文を読む力と深く関係しています。

国語の読解力は、中学生のうちは国語の点数として見えます。けれども、その力は高校以降、数学、理科、英語、社会、さらには資格試験や専門的な学習にまで影響します。

だからこそ、できるだけ早い時期から鍛えておきたい力なのです。

随筆文の次に読んでほしいのは説明文

読解力の基礎を作る段階では、随筆文がよい練習になります。

随筆文は、筆者の体験や感覚が比較的つかみやすく、文章の流れも追いやすいものが多いからです。

では、随筆文の次には、どのような文章を読めばよいのでしょうか。

私は、説明文をすすめたいと思います。

「小説文ではないのか」
「説明文は苦手だから後回しにしたい」
「論説文の方が入試に近いのではないか」

そう思う中学生もいるかもしれません。

しかし、読解力を総合的に高めるうえで、説明文はとても重要なジャンルです。

説明文は、精読の練習に向いている

説明文とは、理科、自然科学、動植物、社会、文化、生活など、ある分野の事実や仕組みを説明する文章です。

論説文のように、筆者の意見や主張が強く前面に出る文章とは少し違います。もちろん、説明文にも筆者の考え方や感想が含まれることはありますが、中心になるのは、事実や仕組みの説明です。

説明文を読むときには、書かれている事実を一つずつ正確に押さえる必要があります。

何について説明しているのか。
どのような順序で説明しているのか。
専門的な言葉は何を意味しているのか。
前の段落と次の段落はどうつながっているのか。

こうした点を丁寧に追わなければ、文章の内容が分かりにくくなります。

つまり、説明文を読む作業は、文章を丁寧に読む練習そのものです。

小説や随筆は、多少読み飛ばしても、大きな流れをつかめることがあります。もちろん本当は丁寧に読むべきですが、人物の行動や場面の流れから、ある程度意味を補うことができます。

しかし説明文では、重要な事実や用語を読み落とすと、文章全体の理解が崩れやすくなります。

そのため、説明文は精読の練習にとても向いています。

辞書を引きながら読む

説明文には、専門的な言葉が出てくることがあります。

理科的な内容であれば、自然科学の用語が出てきます。社会や文化についての文章であれば、制度、習慣、価値観、歴史的背景に関わる言葉が出てきます。

こうした言葉を何となく飛ばしてしまうと、文章の意味がぼやけてしまいます。

そのため、説明文を読むときは、分からない言葉を辞書で調べる習慣をつけるとよいです。

そして、調べた言葉は、語句ノートに書いておくとさらに効果的です。

言葉の意味を調べる。
ノートに書き写す。
本文の中でどう使われているかを確認する。

この作業は時間がかかります。正直に言えば、面倒でもあります。

けれども、この面倒な作業が、読解力をかなり鍛えてくれます。

さらに、語句の意味を正確に知ることは、文章を書く力にもつながります。読む力と書く力は、完全に別々のものではありません。言葉の意味を知り、文章の中での使われ方を意識することで、自分が文章を書くときの表現も少しずつ豊かになります。

トップレベルの高校や大学を目指したい生徒は、説明文を読むときの語句調べを、ぜひ大切にしてほしいと思います。

説明文を読むと、入試に出やすいテーマにも慣れていく

説明文を多く読むことには、もう一つ大きな効果があります。

それは、入試で出題されやすいテーマについて、あらかじめ知識を持てることです。

高校入試の説明文や論説文には、出題されやすいテーマがあります。

環境問題。
地球温暖化。
科学技術と人間の生活。
日本人の美意識。
日本文化の特徴。
言葉とコミュニケーション。
自然と人間の関係。

もちろん、毎年まったく同じ文章が出るわけではありません。

しかし、完全に見たことも聞いたこともないテーマばかりが出題されるわけでもありません。多くの場合、中学生に考えてほしい社会的・文化的・科学的なテーマが選ばれます。

そのため、普段から説明文を読んでおくと、入試の文章に出会ったときに、内容へ入りやすくなります。

たとえば、地球温暖化について一度も読んだことがない生徒が、入試本番で初めてその文章を読むのと、似たテーマの文章を何度か読んだことがある生徒が読むのとでは、理解の速さや正確さに差が出やすくなります。

読書で得た知識は、そのまま答えになるわけではありません。

しかし、文章を読むときの足場になります。

説明文は、得点につながりやすいジャンルでもある

説明文は、文章そのものは少し難しく感じられるかもしれません。

けれども、問題としては、比較的取り組みやすい面があります。

随筆文は、文章自体は読みやすくても、筆者の心情や考え方を問う設問になると、答えにくいことがあります。記述問題で、本文の内容をどうまとめるか迷うこともあります。

一方、説明文の設問は、文章に書かれている事実や内容を正確に読み取れているかを確認するものが多くなります。

つまり、本文を正確に読めれば、正答に近づきやすいのです。

記述問題についても、説明文の場合は、本文中の言葉を使いながらまとめる形になることが多くあります。まったく自分の発想で書くというより、文章中の内容を整理して答える問題が中心です。

その意味では、普段の学習が得点に結びつきやすいジャンルだと考えてよいでしょう。

説明文が苦手な生徒ほど、最初は大変です。

しかし、語句を調べ、段落ごとに内容を確認し、本文に戻りながら読む練習を続けると、少しずつ安定して点が取れるようになる可能性があります。

説明文は、入試問題と一冊の本の両方で読む

説明文を読む材料としては、まず全国の公立高校入試問題が使いやすいです。

高校入試で使われる文章は、中学生にとってやさしすぎず、難しすぎないものが多くあります。問題もついているため、自分がどこまで読めているか確認しやすいです。

ただし、説明文については、入試問題の数ページだけで終わらせず、そのテーマに関する本を一冊読んでみるのも有効です。

たとえば、日本の住宅についての文章を数ページ読むだけより、その分野について書かれた本を一冊読んだ方が、背景知識が深くなります。

日本人の美意識についての文章を短く読むだけより、日本文化や美意識について書かれた本を読んだ方が、文章の意味がつかみやすくなります。

入試問題は、精読に向いています。
一冊の本は、多読と知識づくりに向いています。

この二つを組み合わせると、説明文の読解力は育てやすくなります。

説明文と論説文は、厳密に分けすぎなくてよい

中学生にとって、説明文と論説文の区別は少し難しいかもしれません。

筆者の意見や主張が強く出ている文章は、論説文に近くなります。

一方で、いろいろな事実や仕組みを説明することが中心になっている文章は、説明文に近いと言えます。

ただし、実際の文章では、説明文の中に筆者の考えが入っていることもあります。論説文の中に、長い説明が含まれていることもあります。

ですから、名前にこだわりすぎる必要はありません。

文章全体をざっと読んで、「これは専門的なことがらを説明している文章だな」と感じたら、書かれている事実を一つずつ丁寧に押さえていけばよいのです。

読むときには、必要に応じてノートにメモをとるとよいでしょう。

何について説明しているのか。
重要な言葉は何か。
どのような事実が紹介されているのか。
筆者は最後に何を述べているのか。

こうした点を軽く整理しながら読むと、内容が頭に残りやすくなります。

ただし、すべてを暗記しようとする必要はありません。

繰り返し読むうちに、よく出てくるテーマや言葉は自然に頭に入ってきます。

説明文の読解力は、人生の武器になる

説明文を読む力は、国語のテストだけで終わる力ではありません。

むしろ、将来の学習や仕事に大きく関わる力です。

専門的なことを学ぶとき、人は必ず説明文を読みます。

法律を学ぶ。
会計を学ぶ。
医学を学ぶ。
薬学を学ぶ。
工学を学ぶ。
資格試験のテキストを読む。
仕事でマニュアルや資料を読む。

こうした場面で必要になるのは、派手な物語を楽しむ力というより、書かれていることを正確に読み取り、理解し、整理する力です。

その中心にあるのが、説明文の読解力です。

小説や随筆を読む力も大切です。人間の心情を読む力、感覚を味わう力、表現を受け取る力は、国語の大事な力です。

ただ、将来の学問や資格試験、専門的な仕事に直結しやすいのは、説明的な文章を正確に読む力です。

だからこそ、中学生のうちから説明文に慣れておくことには、大きな意味があります。

最初は苦手でも構いません。

辞書を引きながら読む。
段落ごとに内容を確認する。
知らないテーマに少しずつ触れる。
入試問題の文章を丁寧に読む。
興味のある分野の本を一冊読んでみる。

この積み重ねが、国語の読解力を支えます。

そしてその力は、国語だけでなく、数学、理科、英語、社会、高校以降の学習、将来の資格試験にまでつながっていきます。

説明文の読解力は、苦労してでも伸ばす価値のある力です。