勉強法

レジャーや旅行で体の五感を刺激して脳を活性化

脳は、およそ1千億の神経細胞からできています。脳が、さまざまなことがらを記憶し、いろいろなことについて考えるのは、この神経細胞の働きによるものなのです。

神経細胞は細胞体と樹状突起と軸索の2つから構成されています。細胞体は、中学2年生の理科でも習う、いわゆる普通の細胞です。樹状突起は細胞体を包んでいる短いひげのようなものです。軸索は細胞体から伸びている長いひげのようなものです。

1千億の神経細胞が、長いひげのような軸索を別の神経細胞の樹状突起につながり、神経細胞のネットワークを作っています。軸索は1つの神経細胞に1本しかありませんが、軸索の途中で枝分かれしたり、軸索の先端で複数に枝分かれしたりしています。軸索はいわば、植物の根のようなものです。植物の根もおおもとは1本のものが、先にいくほど複数に枝分かれしていますね。そして、神経細胞は、枝分かれした軸索によって複数の神経細胞とつながっています。
人がさまざまなことがらを経験し、学習し、記憶し、考えることによって、軸索は多く枝分かれするようになり、より多くの神経細胞とつながるようになります。たとえば1つの神経細胞が1本の軸索によって100の神経細胞とつながっていたとします。そのとき、何らかの経験をすると、それまでは1つの神経細胞が100の神経細胞につながっていたのが、1つの神経細胞が800のつながりへと増えたりするのです。新たな考えを持つようになったり、新たな知識を得るというのは、この神経細胞のつながりの増加なのです。1つの神経細胞が100から800へとつながりを8倍にするのですから、100の神経細胞ならば800倍になります。すなわち、何かを経験し、新たな考えを持ち、新たな知識を得るということは、脳の神経細胞のネットワークを頑丈かつ複雑なものにするのです。学校の教科学習で、新しい知識を獲得し、新しい考え方を身につけることも、ことがらの経験と同じです。同じように、脳のネットワークを頑丈で複雑にしてくれます。

ところで脳は左脳と右脳に分かれています。左脳は、文字や言葉を使って論理的な思考を行います。右脳は、五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)と関わっています。身体が感じ取った五感を、右脳が情報として受けとり、瞬間的・直感的・総合的にさまざまなことがらを判断します。たとえば、山や海などの風景を見たとき、即座に美しいと思い、感動するのは右脳の働きです。美味しい料理を1口食べて、美味しいと感動するのも右脳の働きです。

このように左脳と右脳の働きは異なりますが、左脳の神経細胞と右脳の神経細胞がつながっていないわけではありません。つながってはいますが、それが弱いだけです。いろいろなことがらを経験し、さまざまなことがらを学ぶことによって左脳と右脳のつながりも緊密になり、強いネットワークが構築されます。

それでは、脳に強いネットワークが構築されると、何かよいことがあるのでしょうか?それは大いにあります。強いネットワークは弱いネットワークに比べて、ものごとを深く考えられるようになり、新たな考えを身につけやすくなり、新たな知識も蓄えやすくなるのです。すなわち、さまざまなことを経験し、学習すればするほど、脳はどんどん優れたものになっていくのです。

脳の神経細胞どうしのつながりを増やし、ネットワークを強くし、優れた脳にしていくやり方は、勉強をすることの他にも方法があります。それはさまざまな経験によって身体の五感を刺激し、右脳の働きを生き生きとさせ、その影響で左脳の働きも活性化させるというものです。

それでは、右脳、ついで左脳を活性化させるさせる経験にはどんなものがあるでしょう。それには、非常に効果のあるものとして、レジャーや旅行があります。

たとえば、視覚ならば、普段見慣れた景色と異なる景色を見ること、聴覚ならば、海や山では波の音や風の音などの自然の音色を聞くこと、嗅覚ならば、海の潮の匂いや山の樹木の匂い、味覚ならば、旅先での料理、触覚ならば、自然のさまざまなものに触れた感触、といったことです。レジャーや旅行は、日常生活とは異なるさまざまな感覚刺激を与えてくれます。

レジャーや娯楽に体験型イベントを組み込むとさらに良いでしょう。たとえば蕎麦打ちなどです。山間の町に旅行し蕎麦打ちの体験型イベントに参加し、身体の全部を使って蕎麦打ちを経験し、できあがった蕎麦をおいしく食べることは、脳の活性化、そしてそれに伴う脳のリフレッシュを生みます。