東海中学校が中学1年生に家庭学習用に配っている数学のワークブックに、面白い問題が掲載されていました。
方程式の文章問題で、
「3時と4時の間で時計の短針と長針が重なるのは3時何分か、求めなさい。」
というものです。
中学入試では時計算というネーミングがつけられる典型問題ですが、中学生に方程式で解かせるのはあまりありません。市販の問題集や塾用のテキストでは、あまり扱われていません。
複雑な解き方ではないので暗記で済ませられるのですが、解き方をきちんと理解すれば、それだけ数学の力がつきます。なので、ここでは丁寧に説明してみましょう。
まず解き方の種類ですが、2通りあります。1つは時計の目盛りに注目するもの。もう1つは短針と長針が動く際の円の中心角に注目するものです。ここでは2つとも説明します。
そして、2通りの解き方はどちらも速さのジャンルの方程式の文章問題としてとらえると理解がしやすいです。
ということで、初めに速さの問題としてとらえての説明をしましょう。
時計の長針と短針を擬人化して長針君、短針君とします。短針君が時計の上を円を描くように先を歩いていて、長針君が短針君を後ろから追いかけるというものです。これは、池の周りを先に歩くA君を後から追いかけるB君が追い付くのと同じです。
速さの問題なので、距離と時間と速さの3つを考えなければなりません。この3つを順序良く考えることで、頭の中で解き方が整理されます。
それでは、時計の目盛りに注目しての解き方を初めに説明位しましょう。
距離は、目盛りになります。
時間は3時と4時の間で短針と長針が重なる時の分です。xを用いると3時x分となります。
速さは1分間に長針と短針がそれぞれ進む距離です。ここが、特に重要なのですが、この問題では、距離は目盛りになるので、目盛り/分(分速~目盛り)となります。kmやmならば、km/時(時速~km)、m/分(分速~m)と速さを表しますよね。そのkmやmが目盛りになるのです。
では、長針の速さはいくつになるのでしょうか?距離÷時間が速さなので、距離である目盛り÷時間が速さになります。
長針は1分間に時計の目盛り1つ分進みます。60分で60目盛りすすみますからね。つまり、1目盛り/分となります。
続いて短針の速さです。短針は1時間で5目盛り進みます。例えば2時から3時の1時間では、2時から3時までの5目盛り進みます。1時間は60分なので、60分で5目盛り進むから、速さは、5目盛り÷60分=1/12、分速12分の1目盛りになります。
これで距離と時間と速さがそろいました。次は方程式の作成です。
長針君は3時ちょうどに12の文字盤を出発して、3時X分に短針君に追いつきます。短針君は3時ちょうどに3の文字盤ににいます。そこから3時X分までのX分間で少しだけ動いて、長針君に追いつかれます。
方程式の形は、「長針君の進んだ距離=短針君の進んだ距離+15」 となります。
長針君は12の文字盤を出発し、短針君は3の文字盤を出発しています。それで、12から3の文字盤までの15目盛りを短針君の進んだ距離に加えると、長針君の12からの移動距離と同じになります。
長針が、3時から、2つの針が重なった3時X分までに進んだ距離は、速さ×時間=距離に値を代入して、
1(目盛り/分)×X(分)=X(目盛り)となります。
短針は1/12(12分の1目盛り毎分)×X分=X/12が移動距離になります。
すなわち、X=X/12+15となります。
これを解いて11/12×X=15、X=12×15/11、X=16と4/11分となります。
次に角度に注目した解き方を説明します。目盛りでの解き方と骨子は同じです。距離が目盛りであったのに対して、距離が角度になるのです。
目盛りが距離だと、長針の速さは1目盛り/分でした。角度が距離だと速さはどうなるのでしょう。それは、長針が1分間に何度動くのかを考えればいいわけです。長針は60分で360度動くので、1分間では、360度÷60分=6度進むことになります。つまり速さは6度/分と表せます。短針は1時間で30度動きます。たとえば2時から3時の1時間では文字盤の2から3までの30度動きます。60分で30度動くので、1分間では30度÷60分=1/2、1/2度毎分になります。
この6と1/2がそれぞれ速さです。時間はXです。
長針が動いた距離=角度は、速さ×時間=距離に代入して、6×X=6Xです。短針は1/2×Xです。
やはり短針は3からスタート、長針は12からスタートなので、長針と短針の方程式を作るには
15目盛りの代わりに90度を用いて(12と3の間の角度が90度です)、6X=1/2×X+90となります。