中学生

使うテキストを間違えると成績は上がらない

私はかつて、生徒数の多い集団塾に勤め、講師の仕事をしていたことがありました。中学3年生だけでも150人が通っていました。その塾は担任制を設け、学期ごとに保護者面談や生徒との面談を行っていました。

ある年度、成績が伸び悩んでいる1人の中学3年生の男子がいました。偏差値71の県立高校を第一志望としていました。中学校の中間テストや期末テストは450点前後の成績をとり、通知表の評価も5教科とも5段階で5なのですが、実力テストの方は400点を少し超える程度です。

私はこの生徒の担任だったのは中学2年生のときで、中学3年生になってからは違いました。この生徒は、中学3年生の10月の面談で「実力テストの成績を上げるにはどうしたらよいのでしょうか?」と担任の講師に相談し、「頑張っていればそのうち上がる」「計画立てて、前の学年からの復習をきちんとやりましょう」というアドバイスを受けました。

その生徒は、毎日の学習時間は3時間ほどで、前学年の復習も十分にしているつもりだったので、このアドバイスとは異なる助言を受けたくて、その生徒が中学2年生だったときの担任の私のところに相談にきました。
私が「1日3時間の学習量では少ないから、4時間はやったほうがいい」というと、その生徒は「4時間やるにも、やることがあまりない」と返答をしました。そこで私は、家ではどんな勉強をしているのかを尋ねました。するとベネッセの通信添削の進研ゼミ・チャレンジの総復習をやっているということでした。私はそれを聞いて、中学校の定期テストは好成績をあげているのに、実力テストの成績が悪いのかを即座に理解しました。塾の授業では数学の難問も理解し、解法を身につけることができるので、もともとの地頭はよいのです。

ベネッセの進研ゼミ・チャレンジは偏差値55程度の力をつけるのに適した、基礎学力から標準的な学力をつけるには易しいのです。この生徒はすでに十分に身についていることを繰り返しているだけで、応用力を養う勉強はしていなかったのです。
私は、偏差値70の中学生が使う市販の問題集をやるように、そして毎日4時間はやるように言いました。これが10月の下旬です。この生徒はもともと勉強するのが苦ではなかったので、歯ごたえのある問題に意欲を大いに刺激され、毎日5時間はやるようになりました。冬休みの実力テストでは偏差値71に達することができました。2ヶ月で偏差値65から71ですからなかなかのものです。数学については、塾で難しい問題にもある程度挑戦していたので、数学の伸びはまあまあでしたが、英語と理科が飛躍的に伸びました。

偏差値70の高校に進学したいならば、それに合わせたテキストに取り組むことは重要です。
また、これとは逆に偏差値50前後の高校に進学する生徒は、基礎固めをしっかり行えるようなテキストを選ぶことが大切です。

さらには、通り一遍のアドバイスではなく、生徒の学習状況を把握し、その学習状況に沿ったアドバイスを与えてくれるような人間が、その生徒の周りにいることも望ましいです。