「うちの子、全然勉強しなくて……」
これは、保護者の方から最も多く聞く悩みのひとつです。
感情的に叱ってはいけない、ということは多くの親が分かっています。では、
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「なぜ勉強しなければいけないのか」
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「勉強すれば将来どれだけ有利になるのか」
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「勉強しないと将来困ることになる」
こうした“正論”を冷静に説明するのはどうでしょうか。
実は、これも効果的とは言えません。
「あなたのためを思って」は、子どもを動かさない
「お母さんはあなたのことを思って言っているのよ」
「あなたによくなってほしいから言っているの」
一見、とても愛情深い言葉に聞こえます。
しかしこの言葉の裏には、無意識にこんなメッセージが含まれています。
「私の言う通りにしないと、あなたの将来は大変なことになる」
子どもはこれを敏感に感じ取ります。
すると心の中では、
という感覚が生まれます。
母親への依存心が強い子どもであれば、言われるまま一時的に勉強するかもしれません。しかしそれは主体的な学習ではなく、形だけの努力になりやすく、成績は伸びにくいのです。
一方で、独立心が強く、自分で決めたいタイプの子どもほど、この言葉に強く反発し、かえって勉強から遠ざかることも珍しくありません。
大切なのは「諭さない」こと
では、どう接すればよいのでしょうか。
答えは意外にシンプルです。
親は、子どもを諭さないこと。
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「勉強は大切だから」
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「将来のために」
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「あなたのためを思って」
これらを、勉強をしない場面で言わないことです。
勉強の価値を伝えるなら、子どもの勉強とは無関係な、日常会話の中で行います。
たとえば、二宮尊徳(二宮金次郎)の話。
農民の身分でありながら学問に励み、その知恵を使って飢饉に苦しむ多くの人を救った人物であること。
「出世したから偉い」のではなく、「学んだことを人のために使ったから尊敬される」という点を、淡々と話すだけでいいのです。
ここで絶対に言ってはいけないのが、
「あなたも見習いなさい」
という一言。
それを言った瞬間、物語は説教に変わります。
話だけにとどめておくと、子どもの心の中で自然に
「自分も誰かの役に立つ人になりたい」
という思いが芽生えます。
この“内側から生まれた動機”こそが、行動を支える本物のエネルギーになります。
勉強しないとき、親がすべきたった一つのこと
それでは、勉強しない場面ではどうすればよいのでしょうか。
ポイントは一つです。
親自身の率直な感情を、そのまま見せること。
怒りだけでなく、
こうした感情を隠さずに伝えます。
「あなたが勉強をしないでいると、お母さんは不安になる」
「正直、悲しい気持ちになる」
このとき、なぜ不安なのか、なぜ悲しいのかは説明しません。
理由を言った瞬間、また説教になるからです。
多くの子どもは、心のどこかで
「親を悲しませたくない」
「喜ばせたい」
という気持ちを持っています。
その気持ちに、まっすぐ訴えかけるのです。
実は、「どうして勉強しないの」と言う方が、
「あなたのためを思って言っている」より、はるかに健全です。
悲しそうな表情で、率直に言う。
それだけで十分なのです。
良い成績を取ったときも、評価はいらない
では、子どもがテストで良い点を取ったときはどうでしょうか。
これらも間違いではありませんが、もっと大切なことがあります。
それは、
親がただ、素直に喜ぶこと。
「お母さん、すごく嬉しい」
「お父さん、嬉しいなあ」
それだけでいいのです。
言葉を足したくなっても、あえて足さず、笑顔と喜びの感情を大きく表現してください。
子どもは、
「こんなに喜んでくれた」
「また頑張りたい」
と自然に思うようになります。
スポーツ選手の親が、試合後に涙を流して喜ぶ姿をよく目にしますが、あれこそが原動力の正体です。
努力の裏には、「自分のため」よりも「大切な人を喜ばせたい」という気持ちがあることが非常に多いのです。
まとめ:子どもを動かすのは、言葉ではなく感情
子どもがうまくいかないときも、うまくいったときも、
その代わりに、
親自身の正直な感情を見せる。
それだけで、子どもは自分の意思で動き始めます。
その取り組みが勉強であれば、結果として高い学習意欲につながるのです。
これはテクニックではなく、親子関係のあり方そのものなのかもしれません。