国語の読解力を伸ばす第二段階は説明文である
国語の読解力を伸ばす第二段階は説明文である
前の記事では、国語の読解が苦手な中学生は、まず随筆文から始めるとよい、という話をしました。
随筆文は、小説文と論説文のあいだにある文章です。
日常生活に近い話題から始まり、そこから筆者の考えや感じ方へ進んでいく。
そのため、文章を読むのが苦手な生徒でも、比較的入りやすい。
小説文ほど人物の心理を深く追う必要はなく、論説文ほど理屈が硬いわけでもない。
だから、読解の最初の練習として随筆文はとても向いています。
では、随筆文で文章を読む感覚が少しつかめてきたら、次は何を読めばよいのでしょうか。
ここで小説文に進みたくなる人もいるかもしれません。
あるいは、入試に向けて論説文を読んだ方がよいのではないかと思う人もいるでしょう。
しかし、国語の読解力を本格的に鍛えたいなら、次に取り組むべき文章は、説明文です。
随筆文で読解の入り口を作り、説明文で精読の力を鍛える。
この順番が、中学生の読解力を伸ばすうえで、とても効果的です。
読解力は国語だけの力ではない
国語の読解力というと、国語のテストのためだけに必要な力だと思われがちです。
しかし、実際にはそうではありません。
読解力は、あらゆる学習の土台になります。
数学でも、理科でも、社会でも、英語でも、結局は「書かれていることを正確に読み取る力」が必要になります。
問題文を読む。
解説を読む。
参考書を読む。
資料を読む。
先生の説明を聞いたあと、自分でテキストを読み直す。
このすべてに読解力が関わっています。
特に中学生のうちは、まだ「国語は国語」「数学は数学」「理科は理科」と分けて考えがちです。
しかし学年が上がるほど、科目どうしの境目は思ったよりも薄くなっていきます。
たとえば数学でも、問題文の条件を正確に読む力が必要です。
「何を求めるのか」
「どの条件が与えられているのか」
「どの数値を使うのか」
「どの図形の話をしているのか」
これらを読み落とすと、計算力があっても正解にたどり着けません。
理科でも同じです。
実験の条件、観察結果、グラフ、表、説明文を正確に読み取らなければ、知識を持っていても問題が解けません。
読解力が弱い生徒は、本文や問題文に書いてある大事な条件を読み落とすことがあります。
しかも本人は、読み落としていることに気づいていない。
そこが厄介なのです。
たった数行の説明でも、注意して読めないと、学習全体に影響が出ます。
逆に、読解力がある生徒は、参考書に書いてある解き方や、問題文の条件を自然に拾うことができます。
これは大きな差になります。
国語の読解力は、国語の点数だけを上げるための力ではありません。
将来、難しい参考書を読むときにも、資格試験の勉強をするときにも、専門的な文章を読むときにも必要になる、学習の基本体力なのです。
随筆文の次に説明文を読む理由
随筆文で読解の基礎を作ったあと、次に読むべき文章は説明文です。
説明文とは、ある物事について、事実や仕組みをわかりやすく説明する文章です。
自然、動物、植物、科学、環境、社会、文化、歴史、生活、技術など、さまざまなテーマが扱われます。
説明文の大きな特徴は、筆者の感情や主張よりも、物事の仕組みや事実の説明が中心になることです。
もちろん、筆者の考えがまったく入っていないわけではありません。
しかし論説文のように、筆者が強く意見を主張する文章ではありません。
まず、何かについて説明する。
具体例を出す。
原因や理由を述べる。
しくみを整理する。
特徴を比べる。
こうした形で、読者に知識を伝えていく文章です。
この説明文こそ、読解力を鍛えるうえで非常に大切です。
なぜなら、説明文は読み飛ばしがききにくいからです。
小説文や随筆文は、多少読み飛ばしても、話の大きな流れがつかめることがあります。
登場人物の行動や、筆者の体験を追っていけば、細かい部分を多少落としても、大意は見えることがあります。
しかし説明文はそうはいきません。
一つの事実。
一つの条件。
一つの理由。
一つの具体例。
それらを読み落とすと、文章全体の意味がわからなくなることがあります。
説明文では、細部を丁寧に読む必要があります。
つまり、説明文を読む練習は、そのまま精読の練習になるのです。
説明文は、精読を身につけるための文章である
読解力を伸ばすうえで大切なのは、ただ文章をたくさん読むことではありません。
もちろん、読む量も大事です。
しかし、読解が苦手な生徒の場合、ただ量を増やすだけでは、読み方が雑なままになってしまうことがあります。
文字は目で追っている。
最後まで読んではいる。
けれど、何が書いてあったのか説明できない。
本文のどこに大事なことが書いてあったのかわからない。
問題を解こうとすると、何を根拠にすればよいのかわからない。
これでは、本当の読解力はつきません。
必要なのは、文章を丁寧に読むことです。
一文ごとに、何が書かれているのかを確認する。
段落ごとに、話題がどう進んでいるのかをつかむ。
具体例とまとめを区別する。
原因と結果を分ける。
筆者が説明している事実と、筆者の考えを分ける。
こうした読み方を身につけることが、読解力を鍛えるということです。
説明文は、この練習にとても向いています。
なぜなら、説明文では、文章の内容をあいまいに読んでいると、すぐに意味がわからなくなるからです。
読者にごまかしを許してくれない文章なのです。
だからこそ、説明文を読むことは、読解力を鍛えるよい訓練になります。
説明文は、ただ知識を得るための文章ではありません。
正確に読む力を育てるための文章でもあります。
説明文では、言葉の意味をあいまいにしない
説明文を読むときに大切なのは、わからない言葉をそのままにしないことです。
説明文には、専門的な言葉や、ふだんあまり使わない言葉が出てくることがあります。
自然科学、環境問題、文化、社会、歴史、技術などを扱う文章では、知らない語句が出てくるのは当然です。
そのときに、なんとなく読み飛ばしてしまうと、文章全体の理解があいまいになります。
たとえば、本文の中で重要な言葉の意味がわかっていないのに、そのまま読み進める。
すると、途中から文章の流れがつかめなくなります。
本人は一応読んでいるつもりでも、実際には大事な部分が抜け落ちている。
これでは読解力は伸びません。
説明文を読むときは、わからない言葉を辞書で調べる習慣をつけてください。
そして、ただ調べるだけでなく、できればノートに書き写すとよいです。
語句の意味を書く。
本文の中で、その言葉がどう使われていたかを書く。
自分なりに短い例文を作ってみる。
ここまでできると、言葉の力がかなりついていきます。
これは面倒な作業です。
時間もかかります。
しかし、読解力を本気で伸ばしたいなら、とても効果があります。
語句の意味を正確に知ることは、文章を正確に読むことにつながります。
また、調べた意味をノートに書くことで、文章を書く力も少しずつ育っていきます。
読む力と書く力は別の力ですが、完全に切り離されているわけではありません。
正確な言葉を知っている生徒は、文章を読むときにも、書くときにも強くなります。
説明文を読むときは、言葉をごまかさない。
これが大切です。
説明文を読むと、入試でよく出るテーマに慣れる
説明文を多く読んでおくことには、もう一つ大きな効果があります。
それは、入試で出題されやすいテーマに慣れることです。
高校入試の国語では、毎年まったく見たことも聞いたこともないような特殊なテーマばかりが出題されるわけではありません。
むしろ、説明文や論説文には、出題されやすいテーマがあります。
たとえば、環境問題。
地球温暖化。
自然と人間の関係。
科学技術の発展。
日本人の美意識。
言葉と文化。
伝統と現代社会。
動物や植物の生態。
情報化社会。
こうしたテーマは、入試問題で扱われやすいものです。
もちろん、同じ文章がそのまま出るわけではありません。
しかし、似たテーマの文章を読んだことがあるかどうかで、読みやすさは大きく変わります。
たとえば、入試本番で地球温暖化についての文章を初めて読む生徒と、これまでに環境問題についての説明文を何本か読んだことがある生徒では、理解の速さが違います。
すでに大まかな背景知識を持っていれば、本文の内容を受け止めやすくなります。
知らないテーマだと、一つひとつの言葉に引っかかります。
しかし、少しでも知っているテーマなら、文章の流れを予測しながら読むことができます。
これは読解においてかなり大きな差です。
説明文を読むことは、読解力を鍛えるだけでなく、入試で使える知識の土台を作ることにもつながります。
国語の勉強をしながら、理科や社会に近い知識も増えていく。
これが説明文を読む大きな利点です。
説明文の練習には全国版の入試問題集が使いやすい
説明文の読解練習にも、高校入試の過去問はとても役立ちます。
理由は随筆文の場合と同じです。
高校入試に出題された文章は、中学生が読むことを前提に選ばれています。
やさしすぎず、難しすぎず、読解練習にちょうどよい文章が多いのです。
説明文の場合、全国の入試問題をまとめた問題集を使うと、さまざまなテーマの文章に触れることができます。
旺文社の『全国高校入試問題正解』のような、全国の都道府県の入試問題をまとめた問題集は、読解練習の材料としてかなり使いやすいです。
一冊の中に多くの県の問題が収録されているため、環境、科学、文化、社会、自然など、いろいろな分野の説明文を読むことができます。
一つの県の過去問だけを解くよりも、全国の問題に触れた方が、文章の種類に幅が出ます。
読解力を鍛える目的なら、これはとてもコストパフォーマンスの高い方法です。
ただし、最初からすべての問題を解く必要はありません。
まずは本文を丁寧に読むことを優先してください。
わからない語句を調べる。
事実が説明されている部分に線を引く。
具体例とまとめを分ける。
原因と結果を整理する。
筆者の考えが少し出てくる部分があれば、そこを押さえる。
このように、問題を解く前の段階で、本文をしっかり読むことが大切です。
説明文の読解では、問題演習よりも、まず本文の読み方が重要です。
説明文は、本を一冊読む学習にもつながる
説明文については、入試問題だけでなく、一冊の本を読むこともかなり有効です。
これは随筆文とは少し違う点です。
随筆文の場合、読解練習としては、短い文章を丁寧に読むだけでも十分に効果があります。
しかし説明文の場合、一つのテーマについてまとまった本を読むことで、より深い知識を得ることができます。
たとえば、日本の住宅についての文章を数ページ読むだけでも勉強になります。
しかし、日本の住宅文化について書かれた本を一冊読めば、気候、生活習慣、建築、歴史、美意識などがつながって見えてきます。
日本人の美意識についての説明文を一つ読むだけでも役に立ちます。
しかし、その背景にある文化や歴史まで知ると、次に似たテーマの文章を読んだときに、ずっと理解しやすくなります。
説明文の読解は、知識の積み重ねと相性がよいのです。
一つの文章を読んで終わりではなく、似たテーマの文章を何本か読む。
さらに興味が出たら、そのテーマの本を一冊読んでみる。
こうして知識の層が厚くなると、読解力も強くなります。
国語の読解というと、本文だけを見て答えを探すものだと思われがちです。
もちろん、試験では本文に根拠を求めることが大切です。
しかし、背景知識がある生徒は、文章の内容を理解するスピードが速くなります。
説明文を読むことは、読解力と知識を同時に増やす学習なのです。
説明文と論説文の違いは、おおまかでよい
説明文を読もうとするとき、「これは説明文なのか、それとも論説文なのか」と迷うことがあります。
たしかに、説明文と論説文の区別は難しい場合があります。
説明文の中にも、筆者の考えが入っていることがあります。
論説文の中にも、事実の説明が多く含まれることがあります。
ですから、最初から厳密に分類しようとしなくて構いません。
おおまかな見分け方としては、筆者の意見や主張よりも、物事の仕組みや事実の説明が中心になっている文章は説明文に近いと考えてよいでしょう。
たとえば、ある動物の生態について説明している文章。
ある自然現象の仕組みを説明している文章。
日本の文化や生活習慣について説明している文章。
科学技術や環境問題の現状を説明している文章。
こうした文章は、説明文として読解練習に使いやすいです。
逆に、筆者が「だから私たちはこう考えるべきだ」「この社会にはこういう問題がある」と強く主張している文章は、論説文に近くなります。
ただし、分類そのものにこだわりすぎる必要はありません。
大切なのは、文章の中で何が説明されているのかを正確に読むことです。
説明文らしい文章を見つけたら、まずは丁寧に読んでください。
ノートに簡単なメモを取りながら読むのもよい方法です。
何について説明しているのか。
どんな事実が書かれているのか。
どんな具体例が出ているのか。
最後に何がまとめられているのか。
こうした点を押さえながら読むと、説明文の読み方が身についていきます。
説明文の入試問題は、努力が得点につながりやすい
説明文のよいところは、練習した分だけ得点につながりやすいことです。
随筆文や小説文では、文章そのものは読みやすくても、記述問題が難しく作られることがあります。
登場人物の気持ちや、筆者の感じ方を、本文の表現をもとにしてまとめなければならない問題もあります。
そのため、読めているつもりでも、答案を書く段階で苦労することがあります。
一方、説明文の問題は、本文に書かれている事実を正確に読み取れているかを確認するものが多くなります。
つまり、文章を正確に読めれば、答えに近づきやすいのです。
もちろん、説明文にも難しい問題はあります。
しかし、小説文の心情問題や、随筆文の記述問題のように、表現の微妙な読み取りで悩む場面は比較的少なくなります。
説明文では、本文中の言葉を手がかりにして答える問題が多い。
記述問題でも、本文中の言葉を少し整えて答える形が多い。
そのため、記述が苦手な生徒でも、本文を正確に読めていれば、比較的答えを書きやすいのです。
これは、読解が苦手な生徒にとって大きなメリットです。
努力したことが点数に結びつきやすい。
丁寧に読めば正答に近づける。
本文の根拠を探せば答えが見えてくる。
こういう経験を積むと、国語に対する苦手意識も少しずつ変わっていきます。
読解分野で得点力を上げたいなら、説明文の練習はとても重要です。
説明文を読む力は、将来の勉強でも武器になる
説明文の読解力は、高校入試のためだけの力ではありません。
むしろ、将来の学習で何度も必要になる力です。
高校に進むと、教科書や参考書の説明は中学よりも難しくなります。
数学でも、理科でも、社会でも、本文を読んで理解する力が必要になります。
大学受験になれば、さらに長くて抽象的な文章を読むことになります。
大学に入ってからも、専門書や論文、資料を読む機会が増えます。
さらに将来、資格試験の勉強をするときにも、説明文を読む力は大きな武器になります。
法律、会計、医療、福祉、情報、技術、経営。
どの分野でも、専門的な内容を読んで理解する力が必要です。
そのときに役立つのは、物事の仕組みや事実を正確に読み取る力です。
これは、まさに説明文を読む力です。
小説文を読む力も大切です。
随筆文を読む力も大切です。
論説文を読む力も大切です。
しかし、専門的な内容を学ぶときに直接役立つのは、説明文を正確に読む力です。
書かれていることを読み落とさない。
知らない言葉を調べる。
事実関係を整理する。
原因と結果を押さえる。
具体例とまとめを分ける。
こうした読み方は、大人になってからも使います。
だからこそ、中学生のうちに説明文の読解力を鍛えておくことには、大きな意味があります。
随筆文から説明文へ進むと、読解力は一段強くなる
国語の読解力を伸ばすには、順番が大切です。
いきなり難しい論説文に取り組むと、抽象的な言葉や硬い表現に押しつぶされてしまうことがあります。
小説文が苦手な生徒に、小説ばかり読ませても、国語への苦手意識が強くなることがあります。
だから、最初は随筆文から始める。
日常に近い文章を読みながら、筆者の体験と考えを追う。
文章を最後まで読む経験を積む。
そのうえで、第二段階として説明文へ進む。
説明文では、事実を正確に読む。
言葉の意味を調べる。
具体例とまとめを分ける。
原因と結果を整理する。
文章を細部まで丁寧に読む。
この練習によって、読解力は一段強くなります。
説明文は、最初は少し面倒に感じるかもしれません。
知らない言葉も出てきます。
内容も小説や随筆より硬く感じることがあります。
しかし、だからこそ力がつきます。
説明文は、読解力を鍛えるための筋力トレーニングのような文章です。
楽に読める文章ばかり読んでいても、読む力はなかなか強くなりません。
少し注意して読まないと理解できない文章を、丁寧に読み解く。
その積み重ねが、国語の力を本当に伸ばしていきます。
随筆文で読解の入り口を作ったら、次は説明文です。
説明文を丁寧に読むことで、国語の読解力はもちろん、他教科の学習にもつながる本物の読む力が育っていきます。