小学生では高得点だったのに中学で点数が下がる理由
小学生の時は遊んでいてもテストで高得点が取れたのに、中学生になったら急に点数が下がってしまった。
あるいは、中学ではさほど努力しなくてもトップクラスだったのに、高校に進学した途端に全くついていけなくなる。
これは、中学生の生徒さんやその保護者の方から非常によく聞く悩みです。
「授業に集中しなくなったのでは?」「部活で疲れているから?」「勉強が難しくなってやる気をなくした?」
周りの大人はそう思いがちですが、実はどれも正解ではありません。
原因は「本人の怠満」や「性格の変化」ではなく、脳の記憶のメカニズムにあります。
なぜ急に勉強ができなくなるのか?
一言で言えば、脳内で「記憶の干渉」という現象が起きているからです。
小学生の時を例に挙げます。仮に、その生徒の脳が「1日に8の量を整理して覚えられる(処理能力が8)」とします。
小学校の授業で新しく習う知識の量が「1日3」だとすると、余裕で脳内の正しい引き出しに整理されて収まります。毎日「3」ずつ新しい知識が入ってきても、特に家で復習などしなくても、無意識のうちに脳が自動で整理し、いつでも取り出せる知識として綺麗に蓄積されていきます。
ところが、中学生になると、授業で一気に「1日10」の知識が降ってきます。
処理能力が「8」の脳に「10」の知識が流れ込むと、「2」がはみ出します。
問題は、この覚えきれなかった「2」の知識が、綺麗さっぱり消え去ってくれないことです。
新しい学習を邪魔する「順向抑制効果」
この処理しきれなかった「2」のあやふやな知識は、脳内の間違った場所に散らかって居座り続けます。そして、翌日に新しく入ってきた知識を整理しようとする作業を「邪魔」するのです。
これを専門用語で「順向抑制効果(じゅんこうよくせいこうか)」と呼びます。
覚えるべきことが多すぎて整理しきれなかった場合、その「散らかった過去の知識」が障害物となり、新しい知識の暗記どころか、理解することすら困難にさせてしまう状態です。
昨日の知識を破壊する「逆行抑制効果」
もうひとつ、厄介な干渉があります。
「昨日の夜まではある程度理解できていたのに、今日新しいことをたくさん習ったら、昨日できたはずのことも全くわからなくなった」という経験はないでしょうか。
例えば、英語の文法です。
最初は「be動詞の文」と「一般動詞の文」の使い分けがなんとなくできていたとします。しかし、新しく「否定文」や「疑問文」のルールを追加で大量に習った途端、頭の中がパニックになり、最初からできていたはずの「be動詞と一般動詞の使い分け」までわからなくなってしまう現象です。
これを「逆行抑制効果(ぎゃっこうよくせいこうか)」と呼びます。
人間の脳は、新しいものを1つ覚えるために、古いものを1つ忘れるようにできています。これは頭が悪いから起きるのではなく、記憶の総量をほどほどに保ち、脳がパンクするのを防ぐための自然な機能です。皆に等しく起こる現象なのです。
高校に進学して落ちこぼれてしまうのも、全く同じ仕組みです。
その生徒の処理能力が「15」だった場合、中学時代の「1日10」の授業は無意識のうちに綺麗に整理できました。しかし、進学校に入って毎日「30」の知識を浴びた瞬間に、脳が許容量を超えて大混乱を起こしてしまった結果なのです。
具体的にどう行動すればよいか?
この混乱を防ぎ、着実に成績を上げるための解決策はひとつです。
「新しく入ってくる知識の量を、自分でコントロールして制限すること」です。
学校から毎日「30」の知識が出されても、今の自分の処理能力が「15」であるなら、残りの知識は物理的にシャットアウトしてください。「無視しよう」「気にしないでおこう」と頭の中で思うのではなく、以下のような具体的な行動をとります。
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応用問題のページはクリップで留める
今の自分にとって処理能力を超える難しい問題のページは、物理的に開けないようにクリップで留め、視界に入れないようにします。 -
机の上には基本問題のドリルだけを出す
「今日確実に身につける15の量」だけを机に置き、それ以外の難しい教材やプリントはカバンの中にしまいます。 -
テスト中、難しい問題には即座に「×」を書き込む
定期テストの際、自分が混乱しそうな問題を見つけたら、すぐに鉛筆で大きく「×」を書き込みます。そして、確実に解ける基本問題の計算や暗記項目だけを繰り返し見直す作業に徹します。
中学生でとりあえず平均点を目標にするのであれば、毎日の処理限度が「6」のところを、基本問題に絞って「7」や「8」に少しずつ増やす作業を繰り返すだけです。
「全部理解しなければ」という精神論は捨ててください。自分の容量を見極め、「応用問題を物理的に遠ざける行動」と、「基本的な事項のドリルだけを繰り返し解く行動」を辛抱強く続けてください。脳は必ず成長し、知識を整理できる限度量が「15」から「20」、「25」へと確実に増えていく時が来ます。その時を待ちつつ、焦らず基本の行動を徹底しましょう。