国語の記述問題は、才能ではなく技術で書けるようになる
国語の記述問題は、才能ではなく技術で書けるようになる
国語の読解練習では、まず随筆文から入り、次に説明文を丁寧に読むことが大切だという話をしてきました。
随筆文では、文章を最後まで読む感覚をつかむ。
説明文では、事実やしくみを正確に読み取る精読の力を鍛える。
この二つを積み重ねると、国語の読解力はかなり安定してきます。
では、その次に何を練習すればよいのでしょうか。
次の段階で大切になるのが、記述問題です。
国語の問題には、選択問題だけでなく、自分で言葉を書いて答える記述問題があります。
この記述問題が苦手な生徒は、とても多いです。
本文は読めている。
選択問題ならある程度解ける。
しかし、記述問題になると手が止まる。
何を書けばよいのかわからない。
解答欄が空白のままになってしまう。
こういう生徒は珍しくありません。
しかし、最初に大事なことを言っておきます。
記述問題は、文章を書く才能で解くものではありません。
記述問題は、技術でかなり書けるようになります。
記述問題は、短期間で得意にできる
記述問題というと、特別な国語力が必要だと思われがちです。
文章を書くのが好きな生徒でなければ無理。
日ごろから作文を書いていないと無理。
表現力がないと点数にならない。
そう考えている人も多いでしょう。
しかし、高校入試の記述問題について言えば、それはかなり誤解です。
入試の記述問題で求められているのは、自由に立派な文章を書くことではありません。
本文の中から必要な内容を見つけ、それを問いに合う形に整えて書くことです。
つまり、記述問題は「作文」ではありません。
本文を根拠にして、答案の形に加工する問題です。
ここを間違えると、記述問題は急に難しく感じます。
自分で気の利いた表現を考えようとする。
本文から離れて、自分の感想を書こうとする。
きれいな文章を書こうとして、何も書けなくなる。
これでは点数になりません。
記述問題で大切なのは、本文をよく読み、答えに使える部分を見つけ、文末や字数を整えて書くことです。
このやり方を知れば、記述問題はかなり解きやすくなります。
もちろん、読解力がまったくない状態では書けません。
本文の内容をある程度理解できていることは前提です。
しかし、読解力がそこそこあるのに記述だけ書けない生徒は、技術を知らないだけの場合が多いのです。
その場合、記述問題は短期間でもかなり改善できます。
毎日少しずつ、記述問題を二、三問ずつ練習する。
本文のどこを使えばよいのかを確認する。
文末を問いに合わせて直す。
字数に合わせて削る。
この練習を十日から二十日ほど続けるだけでも、記述問題への苦手意識は大きく変わります。
記述問題は、本文の言葉を使って書く
記述問題を解くときに、まず覚えておきたいことがあります。
それは、本文の言葉を使うということです。
国語の記述問題では、基本的に本文に根拠があります。
自分の意見を書く問題ではありません。
自分の感想を書く問題でもありません。
本文の中にある内容を、設問に合うようにまとめて書く問題です。
したがって、答案を作るときには、まず本文の中から使えそうな言葉や文を探します。
そして、それをそのまま、あるいは少し形を変えて解答欄に入れます。
これが記述問題の基本です。
たとえば、本文中に答えに近い部分がはっきりある場合があります。
本当は書き抜き問題にしたかったけれど、そのまま抜き出すと文として少しおかしい。
そういうとき、出題者は記述問題にします。
このタイプの問題は、本文中の言葉をほぼそのまま使えば答えになります。
あとは文末だけを問いに合わせて整えます。
「なぜですか」と聞かれているなら、「〜から。」で終える。
「どのようなことですか」と聞かれているなら、「〜こと。」で終える。
「どのような気持ちですか」と聞かれているなら、「〜という気持ち。」で終える。
この文末の調整だけで、易しい記述問題はかなり正答に近づきます。
記述問題が苦手な生徒は、いきなり全部を自分の言葉で書こうとします。
しかし、それは必要ありません。
まずは本文の言葉を使う。
これが一番大事です。
二か所をつないで答える記述問題
少し難しくなると、本文の一か所だけでは答えが完成しない問題が出てきます。
この場合は、本文中の二か所から必要な言葉を拾ってきます。
そして、それらをつないで一つの答案にします。
これも、記述問題ではとてもよくある形です。
たとえば、理由を答える問題で、前半に原因が書かれていて、後半に結果が書かれていることがあります。
あるいは、登場人物の気持ちを答える問題で、気持ちそのものは一か所に書かれていないけれど、行動と状況を合わせると答えになる場合があります。
説明文なら、ある事実と、それを説明する具体例を組み合わせる問題もあります。
このような問題では、本文の二か所を見つけることが大切です。
そして、それを自然な日本語になるようにつなぎます。
ここでも、特別な文章力は必要ありません。
必要なのは、本文のどこを使うかを見つける力と、文としておかしくならないように少し整える力です。
たとえば、本文中の「〜した」「〜であった」という表現を、答案では「〜であること」「〜したため」のように変える。
あるいは、二つの文をつなぐために、「そして」「そのため」「つまり」などの言葉を入れる。
これくらいの加工で、標準的な記述問題は十分に解けます。
記述問題というと、何かすごい表現を自分で作らなければならないと思いがちですが、実際には本文の材料を組み合わせる作業なのです。
字数に合わせて削る力も必要になる
記述問題には、字数制限があります。
「三十字以内で書きなさい」
「五十字以内で書きなさい」
「六十字以内で説明しなさい」
このような指定がよく出ます。
記述問題が苦手な生徒は、ここで困ります。
本文から使えそうな部分は見つけた。
しかし、そのまま書くと字数を超えてしまう。
では、どこを削ればよいのかわからない。
こういう状態になりやすいのです。
しかし、字数制限も、慣れればそれほど怖くありません。
出題者は、適当に字数を決めているわけではありません。
必要な内容を入れ、余計な言葉を削れば、その字数に収まるように作られていることが多いのです。
削るときにまず見るのは、修飾語です。
「とても」「非常に」「少し」「さまざまな」「大きな」など、なくても意味が通る言葉は削れることがあります。
次に、重複している内容を削ります。
二か所から言葉を拾ってきたとき、同じような内容が重なっていることがあります。
その場合は、片方を短くします。
また、長い表現を短い表現に言い換えることもあります。
「〜することができる」は「〜できる」。
「〜というような」は「〜のような」。
「〜であるために」は「〜ため」。
こうした小さな調整で、字数はかなり削れます。
記述問題では、長く書けばよいわけではありません。
必要な内容を残し、余計な部分を削る。
これも答案作成の大切な技術です。
公立高校入試の記述問題は、標準問題を落とさないことが大切
記述問題には、難しい問題もあります。
本文の言葉を使うだけでは足りず、自分の言葉を補って説明しなければならない問題です。
これは確かに難しいです。
語彙力も必要になります。
文章の内容を深く理解する力も必要です。
しかし、高校入試では、最初からそこばかりを心配する必要はありません。
大切なのは、標準的な記述問題を落とさないことです。
本文の言葉を使えば書ける問題。
本文の二か所をつなげば書ける問題。
文末を問いに合わせれば書ける問題。
字数に合わせて少し削れば書ける問題。
こうした問題を確実に取ることが、合格点に近づくうえでとても大切です。
難しい記述問題が解けないと、自分だけができないように感じるかもしれません。
しかし、本当に難しい問題は、他の受験生もあまり書けません。
合否に大きく響くのは、誰もが取れるはずの標準問題を落とすことです。
記述問題の対策では、難問ばかり追いかける必要はありません。
まずは、本文を使えば答えられる問題を確実に書けるようにする。
ここを徹底するだけでも、国語の点数はかなり安定します。
難しい記述問題には、語彙力と背景知識が必要になる
もちろん、難しい記述問題にも対応できるようになりたい人はいるでしょう。
難関高校や、さらに先の大学入試まで見据えるなら、記述力を高めておくことは大きな武器になります。
難しい記述問題では、本文の言葉を拾うだけでは足りません。
本文の内容を理解したうえで、自分の言葉を補って説明する必要があります。
このときに大切になるのが、語彙力と背景知識です。
たとえば、環境問題についての文章を読むとします。
地球温暖化、再生可能エネルギー、生態系、持続可能性といった言葉をある程度知っている生徒は、文章の内容を理解しやすくなります。
反対に、言葉の意味も背景もまったく知らないと、本文を読むだけで精一杯になります。
その状態で、自分の言葉を補って記述するのは難しい。
つまり、難しい記述問題に強くなるには、ふだんからいろいろな文章を読んでおくことが役立ちます。
説明文や論説文を多く読む。
ニュースや解説記事を読む。
知らない言葉を調べる。
調べた言葉をノートに書く。
できれば短い例文も書いてみる。
こうした積み重ねによって、語彙力が増えます。
語彙力が増えると、読める文章の幅が広がります。
そして、自分の言葉で説明する力もついていきます。
難しい記述問題は、一夜漬けの技術だけでは対応しきれません。
しかし、標準問題を解く技術を身につけたうえで、語彙力と背景知識を増やしていけば、少しずつ書けるようになります。
感想文を書くことは、記述問題対策とは別である
小説文の記述問題を得意にするために、「感想文を書きなさい」と言う人がいます。
本を読んで感想文を書く。
物語について自分の考えを書く。
登場人物について批評する。
こうした練習は、たしかに大切です。
文章を書く力を伸ばすうえでは、とても意味があります。
また、自分の考えを持ち、それを言葉にする練習にもなります。
読んだものをそのまま受け取るのではなく、自分なりに考え、評価し、疑問を持つ。
これはメディアリテラシーにもつながります。
新聞、テレビ、インターネット、本、動画。
私たちは日々、さまざまな情報に触れています。
その情報をすべてそのまま信じるのではなく、どのような立場から語られているのか、何が強調され、何が語られていないのかを考える力は大切です。
感想文や批評文を書くことは、そうした思考力を育てる助けになります。
ですから、感想文を書くこと自体は、とても価値があります。
しかし、それは入試の記述問題対策とは別です。
小説の感想文は、作品全体について自分の感じたことや考えたことを書くものです。
一方、入試の小説文の記述問題は、本文中のある一場面について答えるものです。
「このときの主人公の気持ちを説明しなさい」
「なぜそのような行動をとったのか答えなさい」
「この表現からどのような心情がわかるか」
このように、問われている範囲はとても狭いのです。
作品全体の感想を書く力と、一つの場面の心情を本文の根拠からまとめる力は、同じではありません。
だから、小説文の記述問題を得意にしたいなら、感想文だけを書いていても不十分です。
小説文の記述には、小説文の記述練習が必要です。
解説の詳しい問題集を使い、なぜその答えになるのかを確認しながら練習する方が効果的です。
記述問題で見るべきポイント
記述問題を解くときは、いきなり書き始めないことが大切です。
まず、問いをよく読みます。
何を聞かれているのかを確認します。
理由を聞かれているのか。
気持ちを聞かれているのか。
内容を説明する問題なのか。
言い換えを求められているのか。
この確認をしないまま書き始めると、本文の内容は合っていても、問いに答えていない答案になります。
次に、本文のどこを使うかを探します。
記述問題の答えは、多くの場合、傍線部の近くにあります。
傍線部の前後を読む。
指示語があれば、何を指しているのか確認する。
理由を聞かれているなら、原因やきっかけが書かれている部分を探す。
気持ちを聞かれているなら、行動、表情、会話、情景描写を手がかりにする。
説明文なら、具体例ではなく、まとめや説明の中心になっている文を探す。
そして最後に、答案の形を整えます。
理由なら「〜から。」
内容なら「〜こと。」
気持ちなら「〜という気持ち。」
このように、問いに合った文末にします。
記述問題は、本文の内容がわかっていても、文末がずれると減点されることがあります。
だからこそ、最後の形を整えることが大切です。
記述問題の練習は、解説の詳しい問題集で行う
記述問題の練習をするときは、問題集選びも大切です。
記述問題が苦手な生徒には、解答だけが載っている問題集はあまり向きません。
なぜその答えになるのか。
本文のどこを使うのか。
どの言葉を入れれば点になるのか。
どの部分は削ってよいのか。
こうした説明が詳しく書かれている問題集を使う方がよいです。
記述問題は、答えを見て終わりではありません。
自分の答案と模範解答を比べる。
どの要素が足りなかったのかを見る。
本文のどこを使うべきだったのか確認する。
文末が問いに合っていたかを見る。
字数内に収めるために、何を削ればよかったのかを考える。
この復習がとても大切です。
記述問題は、丸つけをして終わりにしてはいけません。
むしろ、解き終わったあとの見直しで力がつきます。
最初は模範解答と同じように書けなくて構いません。
大事なのは、本文のどこを使えばよかったのかを理解することです。
それを繰り返していくと、だんだん「この問題はこのあたりを使えばよいな」と見えるようになります。
記述問題は、空白にしないことから始める
記述問題が苦手な生徒は、解答欄を空白にしてしまうことがあります。
しかし、空白は一番もったいないです。
記述問題には部分点があります。
完全な答えでなくても、本文から正しい言葉を拾えていれば点が入ることがあります。
理由の一部だけでも合っていれば、部分点になることがあります。
本文の重要語句が入っていれば、採点者に伝わることがあります。
だから、最初から完璧な答案を書こうとしなくてよいのです。
まずは、本文の中から使えそうな言葉を一つ拾う。
次に、それを問いに合う文末に直す。
余裕があれば、もう一つ必要な内容を足す。
このくらいの意識で十分です。
記述問題は、白紙をなくすことから始めてください。
書けば、部分点の可能性があります。
書かなければ、点数は入りません。
そして、書いてみることで、自分に何が足りないのかもわかります。
本文の場所を見つけるのが苦手なのか。
文末を合わせるのが苦手なのか。
字数に収めるのが苦手なのか。
語彙が足りないのか。
原因がわかれば、練習の仕方も見えてきます。
読解力の上に、記述の技術を乗せる
記述問題は、国語の中でも特に苦手意識を持たれやすい分野です。
しかし、怖がりすぎる必要はありません。
記述問題は、才能だけで決まるものではありません。
本文の言葉を使う。
一か所で足りなければ、二か所をつなぐ。
問いに合わせて文末を整える。
字数に合わせて余計な部分を削る。
難しい問題では、自分の言葉を少し補う。
このような技術を身につければ、記述問題はかなり書けるようになります。
もちろん、その土台には読解力が必要です。
本文が読めていなければ、何を書けばよいのかは見えてきません。
だからこそ、最初に随筆文で文章を読む感覚を作り、次に説明文で精読の力を鍛えることが大切なのです。
その上に、記述の技術を乗せる。
この順番で練習すれば、国語の力はかなり安定します。
記述問題は、空白で出すものではありません。
本文を根拠にして、必要な内容を見つけ、問いに合う形に整えて書くものです。
記述問題が苦手な生徒ほど、まずは難しく考えすぎないことです。
自分の名文を書く必要はありません。
本文の中にある答えの材料を見つけて、それを答案の形にする。
その技術を練習すれば、記述問題は必ず書きやすくなります。