私の塾に通ってくる中学1年生は2名ですが、その2名とも、それぞれの中学校の定期テストで学年1位をとりました。
これについて私の考える理由は以下の通りです。
私は20代から30代にかけては、東京都内の進学塾で塾講師を行っていました。難関私立高への進学を志望する中学生の通う塾です。なので中学校の授業の進度や学習内容とは関係なく、高校受験に向けた授業を中1のときから展開していました。当然、中学校の定期テスト対策の授業は全くやりません。それでも通う生徒らは、学校の定期テストの得点は5教科で450点はとるし、学年順位は5番以内などです。
この子らのもともとの基礎能力が高いからというわけではありません。得点で400点前後、順位で20番以下の生徒が、進学塾で中学校の勉強とは一線を画した難度の高い勉強をやることで思考力・暗記力が鍛えられ、自分から主体的に勉強のやり方を工夫し、難しいことに挑戦することでモチベーションが上がるのです。
私は故郷である茨城に帰り、自身で塾を運営するにあたっては、この方法をとりませんでした。長く、中学校の授業の進度と学習内容に合わせて、塾の授業をやってきました。
昔は、能力の高い生徒に対して、学校の授業よりかなり早い進度で難しい演習問題をやったことも何度かありました。けれども、保護者も生徒も中学校の定期テストを最重要視していて、定期テスト対策の授業を強くお願いされて、そのたびに変更を余儀なくされてきました。
話は変わりますが、数年前からの小学校での学習カリキュラムへの英語導入において、小学校と中学校における英語学習の接続の悪さから、英語を苦手とする生徒が非常に増えました。これでは、大学受験時に、文系であろうが理系であろうが、国立であろうが私立であろうが、相当な不利になります。
そこで、英語をさほど習っていない中学1年生には、学校の授業内容と進度から離れて、英語を、文法を中心に基礎を重んじて教えました。簡単なテキストを使ったために、学習はテンポよく進み、学校の授業をかなり先取りしたものになりました。
これは偶然にも、能力の高い生徒に対して、私が何度か行ってきた学習スタイルです。また、試験対策の勉強も、全く行いませんでした。塾での学習内容が、学校の授業内容とは一線を画したものであるため、生徒たちは塾で試験勉強をやるとは考えていなかったのです。
塾での試験勉強は、学校の授業内容が分からない生徒にとっては大切なものですが、学校の授業が理解できていて、あとは覚えるだけ、演習を繰り返すだけという生徒にとっては意味をなさないものです。学力の高い生徒にとっては、塾での試験勉強は、家でやる勉強と同じ、ただの自習です。これでは「自分は塾に通って勉強しているのだから」という使命感やモチベーションは高まりません。試験対策は、習ったことの確認作業ですから、その確認作業でモチベーションが上がるわけはありません。
2名の生徒はどちらも、家庭で試験勉強をしっかりとこなして高い得点をとりました。試験準備の時間も十分とったようです。これは背景にモチベーションの高さがあったからですし、そして、このモチベーションの高さは「学校での勉強とは異なる、自分の学力を伸ばすための勉強をやっている」ことから生まれたのだと思います。