「落ちこぼれ」だった少年が、なぜ東大主席になれたのか

──池谷裕二教授の驚くべき学習ヒストリー

東京大学大学院・薬学系研究科の教授である池谷裕二さんをご存じでしょうか。
脳研究の第一人者であり、テレビの情報番組などでも、ゲストコメンテーターとして時折出演されています。

池谷教授は、

  • 東京大学薬学部を主席卒業

  • 東京大学大学院も主席修了

  • 30代だけで100本以上の学術論文を執筆

  • 世界的科学誌『Science』にも論文掲載

という、まさにエリート研究者です。

ところが、意外にも――

小学生時代は、誰もが認める「勉強ができない子」だったといいます。

小学生時代:全教科が壊滅的

池谷教授は著書『海馬―脳は疲れない』の中で、自身の小学生時代を率直に語っています。

  • 国語:漢字がほとんど書けない

  • 算数:かけ算九九が覚えられない

  • 理科・社会:ほぼ理解できない

小学6年生の学年末、
「小1〜小6までの範囲」の漢字テストで、書けた漢字はたった2つ
漢数字の「二」と、もう1つ簡単な漢字だけだったそうです。

かけ算九九も、
覚えていたのは「2×2=4」「2×3=6」の2つだけ。

それでも本人は明るく、友人関係も良好。
さらに驚くことに、両親から一度も「勉強しろ」と言われたことがなかったそうです。

そのため、
「勉強ができなくても別に困らない」
という価値観のまま、小学校を卒業します。

中学1年生、英語との出会いが転機に

転機は、中学1年生で始まった英語の授業でした。

当時は小学校で英語を学ぶ時代ではなく、
多くの生徒がアルファベットすら満足に言えない状態。

池谷少年は、たまたま通っていた英語塾のおかげで、
アルファベットをAからZまで言うことができました。

結果、クラスの中での英語の成績は「真ん中より少し上」。

このとき、池谷少年は人生で初めてこう感じたといいます。

「人よりできるって、こんなに気持ちがいいんだ」

この経験が、
「他の教科も頑張ってみよう」
という気持ちを生みました。

暗記を捨てた「独自の計算方法」

とはいえ、漢字も九九も相変わらず覚えられません。

そこで池谷少年は、暗記をあきらめるという選択をします。

例えば、
6×8 の場合──

  • 6×10=60

  • 60−6=54

  • 54−6=48

6×4 の場合──

  • 6×10=60

  • 60÷2=30

  • 30−6=24

一見すると、非常に面倒な方法です。
しかし本人にとっては、九九を覚えるよりも楽だったのです。

この「毎回、頭をフル回転させる計算」が、
結果的に脳の処理能力を鍛えたのではないか、と私は考えておりますが、どうでしょうか?

中学3年間で学力が大きく伸びる

その後、池谷少年は学力を伸ばし、
静岡県屈指の進学校である県立藤枝東高校に進学します。

藤枝東高校は、

  • 偏差値65〜67

  • 旧帝大合格者も毎年輩出

  • サッカー名門校としても有名

ここまで成長したことから、
学力の飛躍は中学3年間で起きたと考えられます。

高校では「数学が嫌い」に

意外にも、高校3年生になると、
池谷教授は数学が最も嫌いな科目になったそうです。

理由はこうです。

「どんな難問でも、15分考えれば解法が見える。
そのあと、正解が分かっている計算を続けるのが苦痛だった」

九九も覚えられなかった少年が、
大学入試数学を「見通せる」レベルに達していたのです。

書けない漢字と、東大教授の現在

漢字が苦手なのは、現在も変わらないそうです。

東京大学での講義中、
学生たちがニヤニヤしている理由を尋ねると、

「今日は先生が漢字を何個間違えるか、数えてます」

と返された、というエピソードも語られています。

なぜ池谷少年は伸びたのか

池谷教授の成長の鍵は、
**「暗記できない自分に合ったやり方を選び続けたこと」**にあるように思えます。

  • 覚えられない → 考える

  • 近道がない → 毎回頭を使う

  • その結果 → 脳全体が鍛えられる

一つの分野での思考トレーニングが、
他教科にも良い影響を与えた可能性が高いと思われます。

エピソードの感想

成績が伸びないのは「能力」ではなく「考え方」かもしれません

自分の学力や試験の成績やについて、
「自分は勉強が向いていないのではないか」
「もう伸びないのではないか」
そんな不安を感じたことはありませんか。

しかし、成績の低さ=能力の低さとは限りません。

池谷裕二教授のエピソードは、
勉強とは才能ではなく、思考の積み重ねである
ということを、強く示してくれます。

暗記ができないから「考える」道を選んだ

池谷少年は、最後まで九九や漢字を暗記することが得意になりませんでした。
そこで彼は、覚えることをあきらめ、自分なりの考え方を作る道を選びます。

この「毎回、頭を使う学習」が、思考力そのものを鍛えることにつながったと考えられます。

「考え方」が整うと、成績は後からついてくる

重要なのは、
特別な才能が突然現れたわけではないという点です。

変わったのは、
「覚えられるか」ではなく
「どう考えるか」という学びの姿勢でした。

当塾が「考え方を鍛える」指導を大切にする理由

当塾では、
「たくさん解かせる」「答えを教える」ことよりも、

  • 問題をどう読み取るか

  • 何が分かっていて、何が分からないのか

  • どの考え方を使えばよいのか

こうした思考の整理を重視しています。

なぜなら、
考え方が整えば、
✔ 初見の問題にも対応できる
✔ 教科が変わっても応用できる
✔ 勉強への苦手意識が薄れる

からです。

「今できない」だけで、将来を決めないでください

池谷教授の事例は、
「今、勉強ができない子」が
将来、大きく伸びる可能性を持っていることを示しています。

必要なのは、
✔ 無理な暗記を強いること
✔ 能力で判断すること

ではなく、

✔ その子に合った考え方を一緒に見つけること
✔ 小さな「できた」を積み重ねること

だと、当塾は考えています。

この話は、文庫版『海馬―脳は疲れない』に詳しく書かれています。
興味のある方は、ぜひ一読してみてください。

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