推論の能力を高めると、中学・高校・大学の受験がうまくいく
受験勉強というと、多くの人はまず「知識を覚えること」を思い浮かべます。
英単語を覚える。
漢字を覚える。
数学の公式を覚える。
理科や社会の用語を覚える。
もちろん、知識は必要です。覚えていないことは、試験で使えません。
しかし、受験で本当に差がつくのは、覚えた知識をそのまま出す問題だけではありません。
書かれていることをもとにして、書かれていないことを考える。
与えられた条件から、次に何が言えるかを判断する。
本文や資料の中にある手がかりを結びつける。
知っている知識を、その場の問題に合わせて使う。
こうした力が必要になります。
この力が、推論です。
推論とは、当てずっぽうではない
推論という言葉を聞くと、何か難しいことのように感じるかもしれません。
しかし、推論とは、特別な天才だけが使う力ではありません。
簡単に言えば、今わかっていることをもとにして、次に言えそうなことを考える力です。
たとえば、外から帰ってきた人の服がぬれている。手には傘を持っている。玄関の外を見ると、道路もぬれている。
このとき、「雨が降っていたのだろう」と考える。
これは推論です。
「雨が降っていた」と直接見たわけではありません。それでも、服、傘、道路という手がかりから、かなり自然にそう考えることができます。
推論は、当てずっぽうとは違います。
何となく思いついたことを言うのではなく、手がかりをもとにして考えるのが推論です。
受験で求められる推論も、これと同じです。
問題文に書かれていること。
本文に書かれていること。
図や表に示されていること。
すでに学んだ知識。
条件として与えられていること。
それらをもとにして、答えに近づいていきます。
国語の読解では、推論が中心になる
国語の読解問題では、推論の力がとても重要です。
本文に答えがそのまま書いてある問題もあります。けれども、少し難しい問題になると、本文の言葉をただ探すだけでは答えられません。
たとえば、小説文では、登場人物の気持ちを問われることがあります。
「このときの主人公の気持ちとして最も適切なものを選びなさい」
こういう問題では、本文に「主人公は悲しかった」とはっきり書かれていないことも多いです。
そのかわりに、表情、しぐさ、会話、行動、場面の変化が書かれています。
黙ってうつむいた。
返事をしなかった。
急に早足で歩き出した。
いつもなら笑う場面で笑わなかった。
こうした表現を手がかりにして、「この人物は傷ついているのではないか」「本当は悔しいのではないか」「言いたいことを飲み込んでいるのではないか」と考えます。
これが推論です。
説明文や論説文でも同じです。
筆者が何を言いたいのか。
具体例は何を説明するために出されているのか。
前の段落と後の段落はどうつながっているのか。
「しかし」の後で、筆者は何をひっくり返そうとしているのか。
こうしたことを読み取るには、文章の中の手がかりをつないで考える必要があります。
国語ができる生徒は、ただ読むのが速いだけではありません。
本文に書かれていることから、次に何が言えるのかを考える力があります。
数学でも推論が必要になる
数学は、推論の科目そのものです。
公式を覚えることは大切です。しかし、公式を覚えただけでは、問題は解けません。
どの条件に注目すればよいのか。
どの公式を使えばよいのか。
なぜ、その補助線を引くのか。
なぜ、その文字を置くのか。
この式変形の次に、何ができるのか。
こうした判断が必要になります。
たとえば、図形の問題では、問題文に「この三角形は合同である」と書いてあるとは限りません。
辺の長さが等しい。
角度が等しい。
平行線がある。
円周角がある。
二等辺三角形が隠れている。
そうした条件をもとにして、「この二つの三角形は合同になりそうだ」「この角度は同じになるはずだ」と考える。
これが数学の推論です。
方程式の文章題でも同じです。
問題文の中にある数量関係を読み取り、「何をxと置けばよいか」「どの関係を式にすればよいか」を考えます。
高校数学になると、この力はさらに重要になります。
参考書の解法を丸暗記しても、少し形が変わった問題になると手が止まることがあります。なぜなら、解法の見た目だけを覚えていて、その中で行われている推論を理解していないからです。
数学が伸びる生徒は、解き方を覚えるだけでなく、「なぜここでこの考え方を使うのか」を理解していきます。
理科・社会でも、推論が得点を分ける
理科や社会は暗記科目だと思われることがあります。
たしかに、用語や基本知識を覚えることは必要です。
しかし、入試問題では、知識をそのまま答えるだけではなく、資料、表、グラフ、実験結果を読み取る問題が多く出されます。
理科では、実験の結果から何が言えるかを考える問題があります。
温度が上がった。
気体が発生した。
色が変わった。
重さが変化した。
対照実験では変化しなかった。
こうした結果をもとにして、「何が原因だったのか」「どの条件が関係しているのか」を考えます。
社会でも、資料の読み取りがあります。
人口の変化。
産業構造の変化。
輸出入の割合。
雨温図。
歴史資料。
地図。
ただ数字を見るだけではなく、「この地域ではなぜこの産業が発達したのか」「この時代に何が変わったのか」「このグラフからどんな社会の動きが読み取れるのか」を考えます。
これも推論です。
知識を覚えている生徒でも、資料を見て考える力が弱いと、入試問題で点を落とします。
逆に、知識が整理されていて、資料から考える力がある生徒は、初めて見る問題にも対応しやすくなります。
英語長文でも、推論が必要になる
英語の長文読解でも、推論は重要です。
英語というと、単語や文法の知識がまず必要です。これは当然です。
しかし、単語の意味がだいたい分かっても、文章全体の意味がつかめないことがあります。
その原因の一つは、英語力だけではなく、文章を推論する力の不足です。
この段落は前の段落の理由なのか。
具体例なのか。
反対意見なのか。
筆者の主張なのか。
この代名詞は何を指しているのか。
この接続詞の後で、話の向きはどう変わるのか。
こうしたことを考えながら読む必要があります。
英語長文が難しくなるほど、単語の置き換えも増えます。
同じ内容を、別の表現で言い換える。
具体例を出して説明する。
反対意見を紹介してから筆者の考えを述べる。
最後に全体の主張をまとめる。
これは国語の論説文とよく似ています。
つまり、英語長文を読む力の中には、国語的な推論の力も含まれています。
英語が得意な生徒でも、文章の論理を追う力が弱いと、難しい長文で伸び悩むことがあります。
中学受験・高校受験・大学受験で推論の形は変わる
推論の力は、どの受験段階でも必要です。
ただし、求められる形は少しずつ変わります。
中学受験では、まだ小学生なので、具体的な場面から考える推論が多くなります。
物語文で人物の気持ちを読む。
算数の文章題で条件を整理する。
理科の実験結果から理由を考える。
社会の資料から地域の特徴を読み取る。
この段階では、具体的なものをもとにして考える力が大切です。
高校受験になると、抽象的な文章や、複数の条件を組み合わせる問題が増えます。
国語では論説文が難しくなります。
数学では関数、図形、証明が本格化します。
理科では実験考察の問題が増えます。
社会では資料と知識を結びつける力が問われます。
大学受験になると、さらに抽象度が上がります。
現代文では、筆者の主張を論理的に追う力が必要になります。英語では、長い文章の構造を読み取る力が求められます。数学では、定型問題だけでなく、条件から方針を立てる力が重要になります。
つまり、学年が上がるほど、単純な暗記だけでは足りなくなり、推論の力が前面に出てきます。
推論力がある生徒は、初めて見る問題に強い
入試では、まったく同じ問題が出るわけではありません。
問題集で解いた問題と似ているものは出ます。しかし、数字が変わり、条件が変わり、文章のテーマが変わります。
そのときに必要なのが、推論する力です。
この問題は、前に解いたあの問題と似ている。
ただし、条件が一つ違う。
だから、同じ解き方をそのまま使うのではなく、ここを変える必要がある。
このように考えられる生徒は、初めて見る問題にも対応できます。
一方で、解き方を丸暗記しているだけの生徒は、少し形が変わると迷います。
見たことがある問題なら解ける。
でも、見たことがない問題になると止まる。
これは、知識が足りないというより、知識を使って考える推論の練習が不足している場合があります。
受験で安定して点を取るには、覚えたことをそのまま出す力だけではなく、覚えたことをその場で使う力が必要です。
推論力を高めるには、理由を考える習慣が必要
推論の力は、特別な教材だけで育つものではありません。
普段の勉強の中で、「なぜそうなるのか」を考えることが大切です。
国語なら、答えを選んだあとに、本文のどこが根拠なのかを確認します。
数学なら、解法を写すだけでなく、なぜその式を立てるのか、なぜその補助線を引くのかを考えます。
理科なら、実験結果から何が言えるのか、どの条件が結果に影響したのかを考えます。
社会なら、なぜその地域でその産業が発達したのか、なぜその時代に制度が変わったのかを考えます。
英語なら、なぜこの接続詞のあとで話の流れが変わるのか、なぜこの選択肢が本文の内容と合うのかを考えます。
推論力を高める勉強では、「答えが合っていたかどうか」だけで終わらせないことが重要です。
なぜその答えになるのか。
ほかの答えではなぜだめなのか。
どの条件を使ったのか。
どの知識と結びつけたのか。
そこまで確認すると、次の問題で使える力になります。
音読や説明も推論力を鍛える
推論力を高めるには、頭の中で何となく考えるだけでなく、言葉にすることも大切です。
たとえば、問題の解説を音読する。
声に出して読むと、読み飛ばしていた言葉に気づくことがあります。特に数学や理科の解説では、短い文の中に大事な条件が入っていることがあります。
また、自分の言葉で説明することも効果があります。
「なぜこの答えになるのか」を説明しようとすると、自分がどこまで分かっているのかが見えてきます。
説明できるということは、頭の中で条件や理由がつながっているということです。
逆に、答えは合っていても説明できない場合は、たまたま解けただけかもしれません。
受験勉強では、正解した問題も大切です。
なぜ正解できたのかを説明できるようになると、その解き方は本当の力になります。
推論力は、知識とセットで伸びる
ただし、推論力だけを独立して鍛えればよいわけではありません。
推論には材料が必要です。
材料になるのは、知識です。
語彙を知らなければ、国語の文章は読みにくくなります。
公式を知らなければ、数学の推論は進みません。
基本事項を知らなければ、理科や社会の資料を読んでも意味が取れません。
単語や文法を知らなければ、英語長文の流れも追えません。
知識がないまま考えようとしても、推論は空回りします。
大切なのは、知識を覚えることと、その知識を使って考えることを分けすぎないことです。
覚える。
使う。
なぜそうなるか考える。
別の問題に応用する。
この流れの中で、推論力は育っていきます。
推論力を育てる勉強は、時間がかかる
推論力は、一週間で急に完成する力ではありません。
問題の答えを覚えるだけなら、短期間でできることもあります。
しかし、文章を読み、条件を整理し、根拠を見つけ、理由をつなぎ、自分で考える力は、少しずつ育っていきます。
だからこそ、早い段階から意識しておくことが大切です。
中学生のうちに推論する習慣をつけておくと、高校の勉強に入りやすくなります。
高校生のうちに、参考書や問題文を丁寧に読む力を育てておくと、大学受験で大きな助けになります。
大学受験をこえたあとも、資格試験や専門的な学習では、推論する力が必要になります。
推論力は、受験のためだけの小手先の技術ではありません。
勉強を続けていくための、かなり根本的な力です。
受験勉強は、推論力を育てる場でもある
受験勉強は、ただ点数を取るためだけのものではありません。
もちろん、志望校に合格することは大きな目的です。
しかし、その過程で身につける力には、受験後も残るものがあります。
文章を正確に読む力。
条件を整理する力。
根拠を探す力。
知識を組み合わせる力。
理由を説明する力。
初めて見る問題に向き合う力。
これらはすべて、推論の力と深く関係しています。
推論力が高まると、国語だけでなく、数学、理科、社会、英語の学習も安定しやすくなります。
中学受験、高校受験、大学受験のどの段階でも、最後に伸びる生徒は、ただ覚えるだけでなく、考える力を育てています。
推論の能力を高めることは、受験をうまく進めるための大きな武器になります。
そしてそれは、受験が終わったあとにも残る、学問全体を支える力になります。