理科

静電気と不織布マスク

マスクと飛沫核

布マスク、ウレタンマスク、不織布マスクの3種類のうち、新型コロナウイルスの通り抜けを最も良く防ぐのは不織布マスクです。空気中に漂う、ウイルスを含んだ飛沫核(非常に小さなチリのようなもの)を口の中に吸い込んだり、咳をしたり声を発したりしたとき、口の中から出るウイルスを含んだ微小な飛沫を最も良く遮断するのは不織布マスクです。

マスクの素材

布マスク、ウレタンマスク、不織布マスクの材料である布について述べます。ウレタンマスクの材料である布は、ポリウレタンという化学繊維を織って作られています。布マスクの布は、コットンの繊維を織って作られています。不織布マスクの不織布は、繊維を織らず、いくつもの繊維を貼り合わせたり、力を加えたりなどして、繊維を絡み合わせて作られています。

繊維を織ったり絡み合わせたりして布を作っているわけですから、繊維と繊維の間にはすき間があります。もし布にすき間がなければ、空気を吸ったり吐いたりできずに窒息してしまします。

マスクを通過する飛沫核

そして3種類の布のいずれも、新型コロナウイルスを含んだ微小な飛沫よりも大きなすき間を持っています。つまり、小さな飛沫はマスクの繊維と繊維の間のすき間から通り抜けてしまうのです。

これを数字にすると、空気中の飛沫や、相手が発声やくしゃみで飛ばした飛沫を遮断する比率は、不織布マスクが70%、布マスクが35~45%、ウレタンマスクが30~40%です。また、自分が新型コロナウイルスを持っていて、それを咳や発声によって飛沫として口から外に出るとき、それが空気中に拡散しないようにマスクが飛沫を遮断するのですが、その遮断の比率は、不織布マスクが80%、布マスクが66~82%、ウレタンマスクが50%です(豊橋技術科学大学、理化学研究所、神戸大学のシミュレーション)。

こうしてみるとウレタンマスクの性能がかなり落ちるようです。

静電気とは

では、これらの遮断率の差の原因はどこにあるのでしょう。

それは静電気です。静電気というのは、静かにじっとしている電気のことです。冬の日に、金属製のドアのノブや手すりを触ったときバチッとくる電気、セーターを脱いだときバチバチッとする電気が静電気になります。また天候の雷も静電気の1つです。
電気には他に、一般家庭での電灯やテレビ、充電して使用するスマホ、乾電池などの電気があります。これらは流れている電気=動いている電気です。静電気と流れている電気はどちらも同じものです。

2種類の物体がこすれあうと静電気が発生するようになっています。たとえば、プラスチックの下敷きと紙をこすり合わせると、紙と下敷きがくっつきます。これは、紙と下敷きの両方に静電気が発生したからです。また、プラスチックの方はマイナスの電気を帯びます。紙はプラスの電気を帯びます。電気の性質としてプラスの電気とマイナスの電気は引きつけ合います。一方、プラスとプラス、マイナスとマイナスは反発し合います。プラスとマイナスの電気が引きつけ合うのでプラスの電気を帯びた紙とマイナスの電気を帯びたプラスチックが引きつけ合うのです。

静電気によって飛沫核を捕まえるマスク

それではマスクに話を戻しましょう。

空気中に漂う、ウイルスを含んだ微小な飛沫核(非常に小さなチリのようなもの)も静電気を帯びています。2種類の物質がこすれ合わないと静電気を生じないのですが、この場合は、空気と飛沫核がこすれ合うことで、飛沫核に静電気が生じるのです。ここで注意するのは、空気もまた物質であるということです。空気は主に窒素80%と酸素20%からできています。二酸化炭素やアルゴンといった気体はわずかです。この窒素の分子と酸素の分子が飛沫核とこすれ合うことで飛沫核に静電気が生じます。非常に大量の窒素と酸素の分子が次々と飛沫核にぶつかり続け、いわば、こすっている状態になっています。飛沫核に対して窒素や酸素の分子の数は膨大です。ですから、1つ1つの分子が帯びる電気は非常に少量になり、帯びていないのと等しくなります。

マスクの方も、布を作り上げている繊維に静電気が生じています。そして生じている静電気の強さは、不織布マスクが最も大きく、次が布マスク、一番小さいのがウレタンマスクです。

飛沫核が繊維と繊維の間を通過しようとするとき、静電気のプラスとマイナスの引きつけ合う力によって、飛沫核は繊維にとらえられてしまうのです。そのため、すき間を通過できないのです。つまり、不織布マスクが飛沫核を遮断する力が強いというのは、不織布マスクが他のマスクに比べて、静電気を帯びやすくなっているということです。すき間を通過しようとする飛沫核を静電気の力で捕える力が大きいということです。

ウレタンマスクでも大丈夫です

ところで、ウレタンマスクはウイルスを遮断する効果が低いから、不織布マアスクをかけようという声があります。不織布マスクはウレタンマスクに比べて息苦しくなりがちですし、肌も荒れやすいです。ウレタンマスクでも飛沫を飛ばさないように注意すれば大丈夫でしょう。

城東進学会では講師が不織布マスクをし、フェイスガードもつけ、アクリル板の仕切りも設置しています。教室内の生徒数も少なく、生徒は大きな声で話し続けることもありません。生徒と生徒の間の距離も十分にとっています。ですから、生徒はウレタンマスクで十分大丈夫です。