理科

原子はどうやってできたのか?

原子の構造

原子は原子核と電子の2つからできています。原子核の周りを電子が飛び回っているイメージです。ちょうど太陽の周りを地球が回っているようなものです。

そして、原子核は陽子と中性子からできています。すなわち、原子は陽子と中性子と電子というたった3種類の素材からできているのです。全ての原子は、この3種類の素材しか使っていません。たとえば、水素は、陽子と中性子と電子がどれも1個ずつ集まってできています。炭素は、陽子と中性子と電子がどれも6個ずつあります。酸素は、陽子と中性子と電子がどれも8個ずつあります。陽子と電子の数はいつも同じですが、陽子と中性子の数は、異なる場合があります。鉄は陽子が26個ですが、中性子は30個です。また、電子は26個です。材料は全く同じであるのに、数が違うことで水素にも鉄にもなるのです。水素は、爆発ともいえる激しい燃え方をして水になるのですが、その水素と、日常生活でなじみのある金属の鉄が、材料を同じにしているのは不思議です。

原子はどうやってできたか?

それでは、これらの原子はどうやって作られたのでしょうか?

宇宙の誕生で水素とヘリウムの原子核が作られる

それは、我々の住む地球が存在するこの宇宙の誕生及び変成と密接な関係があります。

今からおよそ138億年前に我々にとっての宇宙が誕生しました。そして、誕生直後の約3分間で、陽子や中性子ができました。最初は陽子も中性子も単独で作られたのです。できあがった陽子や中性子は直ぐにくっついて、水素やヘリウムの原子核となりました。最初の原子核は水素とヘリウムのみでした。原子核の総数の92%が水素で、8%がヘリウムでした。水素は陽子と中性子が1個ずつであり、ヘリウムは陽子と中性子が2個ずつです。

38万年後に水素とヘリウムの原子が作られる

誕生から約38万年後の宇宙は大量の電子が自由に飛び回っている状態でした。電子が自由に飛び回ることができたのは、宇宙が高温だったからです。そして宇宙の温度が3000度まで下がると、原子核が電子を捕まえるようになりました。原子核の周りを電子が回るようになり、ようやく、今と同じ姿の原子となりました。水素やヘリウムの原子は、宇宙が誕生して間もない頃に生成されたのです。

恒星の出現

こうして大量の水素やヘリウムの原子が宇宙空間に分布するようになるわけですが、その分布は均一ではありませんでした。水素やヘリウムの原子が多く集まり、気体として濃くなっているところもあれば、原子が集まらずに気体が薄くなっているところもありました。水素やヘリウムの気体の濃いところは万有引力の法則によってさらに濃くなっていき、気体は球状の形になりました。これが恒星です。太陽もこうした星の1つです。太陽もまた水素とヘリウムでできた星なのです。

恒星内部でさまざまな原子が作られる

水素やヘリウムが集まって1つの星となった恒星の内部では核融合や核分裂の反応が繰り返し起きていました。それによって、陽子と中性子の数が8個とか12個とかの原子も作られました。それが酸素や炭素や窒素や鉄などです。すなわち、最初は水素とヘリウムだけが作られ、それらを材料にして、恒星内部で新たな種類の原子が作られていったというわけです。これが宇宙誕生から4億年後のことです。

陽子の数が26個である鉄までは恒星の内部で作られましたが、陽子の数がそれ以上のものは、惑星内部で作られませんでした。陽子の数が26個までの、惑星内部で作られた代表的な原子は、水素、ヘリウム、 炭素、窒素 酸素、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、硫黄、塩素、カリウム、カルシウム、鉄です。陽子の数が26個より多くて恒星の内部で作られないものは、銅、亜鉛、銀、白金、金、水銀、鉛、ウランです。

超新星爆発などによって金や銀が作られる

それでは、陽子の数が26個より多い、金や銀などの物質はどこで作られたのでしょう。

それは、まだはっきりしていません。今のところ、2つの仮説があります。1つめの仮説は、2つの中性子星の合体によってできたというものです。もう1つの仮説は、超新星爆発によってできたというものです。超新星爆発というのは、太陽の10倍以上の質量を持つ恒星が、星の寿命が尽きるときに起こす爆発です。超新星爆発で、陽子の数の多いさまざまな種類の原子が作られ、それらが破片となって宇宙に散らばったのです。それらの破片は宇宙空間を漂います。破片は恒星の重力に捕まり、恒星の周りを回っているうちに集まり、惑星となります。それで、惑星には非常に多くの種類の原子が存在するのです。

我々の体は恒星の破片が姿を変えたもの

地球もまた、そうやってできた惑星の1つです。地球の大地の鉱脈で発見される金や銀は、もとは超新星の破片です。
そして、我々の人体もまた、さかのぼれば恒星の破片に行きつくのです。人体はさまざまな原子で構成されています。炭水化物、タンパク質、脂肪は炭素、窒素、水素、酸素の化合物です。骨格はカルシウムからできています。血液やリンパ液は水とナトリウム、カリウムです。水は水素と酸素です。他にセレン、マグネシウム、亜鉛、鉄といった微量元素も人体の中にあります。これらの元素は全て、恒星の活動や超新星爆発で作られ、何らかの形で宇宙空間に飛び散ったものなのです。膨大な破片が集まって地球となり、地球上のさまざまな原子を用いた原初の生命が誕生し、それが悠久の時間をかけて進化していき、我々人類が誕生したのです。