学習意欲

学習意欲を高めるモチベーション

どんなモチベーション(動機づけ)だと、勉強のやる気が高まるのでしょうか。
これについては、教育心理学という学問で、さかんに研究と検証が行われ、有意義な結論がいくつも出ています。
今回はそれらの研究と検証をふまえて、勉強のやる気が高まるモチベーションについてお話します。
初めに、勉強のモチベーションの種類について説明します。
勉強のモチベーションはさまざまなものがあります。「楽しいから勉強する」というのであれば「楽しさ」が勉強のモチベーションになります。「勉強をして成績が上がるとスマートをフォンを買ってもらえるから」というのであれば、「スマートフォンを手に入れること」が勉強のモチベーションになります。他にも「誉められたいから」「叱られたくないから」「友達に負けたくないから」「勉強が得意だとかっこいいから」「行きたい高校があるから」などなど、勉強のモチベーションは実にバラエティに富んでいます。
ですが、心理学では、この勉強のモチベーションを4つに分けるとらえ方があります。
それは、外的動機づけ、取り入れ的動機づけ、同一化的動機づけ、統合的動機づけ、内発的動機づけです。もともとは外発的動機づけと内発的動機づけの2つの区分が主流の考え方だったのですが、デシとライアンという2人の研究者が、外発的動機づけをさらに、外的動機づけ、取り入れ的動機づけ、同一化的動機づけ、統合的動機づけの4つに分けました。デシの分け方が最も説得力があるということで、今は、5つの区分法で考える人が多くなっています。(研究者によっては、統合的動機づけを省略して4つの区分法にしている場合もあります。)
整理すると、外発的動機づけが区分された外的動機づけ、取り入れ的動機づけ、同一化的動機づけ、統合的動機づけの4つと、内発的動機づけの1つの合計5つとなります。
内発的動機づけは、自分の感情や心の動きが勉強のモチベーションとなっているものです。楽しいから勉強する、興味がある世界だから勉強するなどがこれです。楽しさや興味というのは、自分の内なる世界のものであり、この内なる世界が発した動機なので内発的動機づけと呼ばれています。誉められると嬉しいから勉強するというのは、誉める相手が自分の外側にいるので内発的動機づけではありません。嬉しいという感情はありますが、それは自分という人間の外側の世界にいる誰かが誉めることによって生まれた感情です。モチベーションのおおもとは外側にあるので内発的動機づけにはならないのです。内発的動機づけの場合、モチベーションのおおもとは自分の中にあります。
外発的動機づけは、外部からの働きかけで勉強のモチベーションが生じることです。内発的動機づけとは真逆になります。外発的動機づけは、非常に多くの種類があります。先に述べた「スマートフォンが買ってもらえるから」「誉められると嬉しいから」「叱られるのは嫌だから」というのは、すべて外部からの働きかけで生み出されたモチベーションです。
そして、モチベーションとは考えにくいものも、この外発的動機づけになります。叱られたくないとか、誉められたいとか、「ごほうび」がもらえるといった理由はなく、自分にとっては勉強をするのが義務だと考える場合でも、外発的動機づけになります。勉強しないと叱られるわけでもなく、勉強したから誉められたり、ごほうびをもらえりわけでもないが、勉強しなさいと言われたから、素直に命令に従って勉強したという場合も、親や教師からの命令が外発的動機づけのモチベーションになります。すなわち、自分の外側からの何らかの働きかけによる勉強は全て外発的動機づけになるのです。
内発的動機づけは、勉強が楽しいから、学習の内容に興味があったからといったわずかなものしかありません。勉強をするときのほとんど全ての理由が外発的動機づけになります。
この非常に多くの外発的動機づけを分類することによって、勉強のモチベーションとしてはどんなものがふさわしいのかがわかってきます。
外発的動機づけの細かな区分のうち、「外的動機づけ」は、外からの圧力による動機づけです。「親や教師に叱られたくないから」「良い成績がとれたらごほうびがもらえるから」などです。自ら進んで勉強しようという気持ちは非常に弱く、外からの強い働きかけがあるので勉強している状態です。ごほうびが任天堂のスイッチならば、自分の外の世界からの自分自身へのまあまあ強い働きかけですし、新型iPhoneならば外側からのかなり強い働きかけだと言えます。勉強をやらないと一週間ゲーム禁止というのも外からの強い働きかけになります。
「取り入れ的動機づけ」は、「友達に負けたくないから」「成績が悪いと恥ずかしいから」といったものがモチベーションとなって勉強をすることです。勉強をした後の達成感や、良い成績をとったときの「自分は能力が高い人間なんだ」という有能感を求めて勉強します。「勉強は価値のあるものだ」という考えがある程度、自分の中にあるのが特徴です。こうした「勉強は価値があるものだ」という考えが自分の中にいくらかあるため、自ら進んで勉強をしようという気持ちが少しあります。
それでも、全体としては、外からの働きかけがなければ勉強をしないであろう心的状態です。

「同一化的動機づけ」は、「ヨーロッパで暮らしたいから語学の勉強をする」「有名大学に進学したいから勉強をする」「スポーツカーを開発するエンジニアになりたいから勉強をする」というように、大きな目的や高い目標があり、それらを達成するために勉強をすることです。目的や目標は自分の外側にあり、その目的や目標の達成が勉強のモチベーションとなっているので、外発的動機づけの一種になります。「同一化的動機づけの特徴」は、勉強することに価値を見出し、自ら進んで勉強しようというというものです。
「統合的動機づけ」は、「勉強することにやりがいを感じるから勉強をする」「自分が向上できるから勉強をする」「日々、継続して勉強をすることに自分らしさを感じるから勉強をする」といったものです。勉強が自分にとって非常に有意義なものであり、勉強することが自分にとって自然なものであり、勉強は自分の生活の一部であり、自分という人間の人格の一部であると受け止めているのが、統合的動機づけです。内発的動機づけと似ていますが、同じではありません。内発的動機づけは、勉強に楽しさを見いだし、その楽しさがモチベーションとなって勉強をするのですが、統合的動機づけは、勉強することが自分にとって自然なことだからというように、明確なモチベーションはなくなっています。
また、内発的動機づけによる勉強は、勉強が楽しいので勉強をするというように、勉強することが目的となっています。これに対して、外発的動機づけはすべて勉強することは目的ではなく、勉強以外の何かのための手段となっています。外的動機づけならば、ごほうびを手に入れることが目的であり、勉強はそのための手段です。取り入れ的動機づけは、自分は有能な人間であることを示すのが目的であり、それを示すための手段として勉強があります。同一化的動機づけは、有名大学への進学や希望する職業に就くことが目的であり、その目的をかなえるための手段として勉強があります。内発的動機づけと外発的動機づけの決定的な違いは、勉強それ自体が目的であるか、勉強が手段であるかの違いです。
外発的動機づけの4つの区分はつながりがあります。勉強のモチベーションは、「外的動機づけ→取り入れ的動機づけ→同一化的動機づけ→統合的動機づけ」の流れで成長していきます。
初めは「叱られたくないから勉強をする・ごほうびが欲しいから勉強をする」であったものが、勉強を続けていくうちに、「友達に負けたくないから勉強をする・悪い成績をとると恥ずかしいから勉強をする」というモチベーションに変化していきます。そして、次には「有名高や有名大に進学したいから勉強をする」となります。毎日しっかりと勉強するようになると、今度は「勉強するのが自分らしいから、自分にとって自然だから勉強をする」となります。外的動機づけでは、自ら進んで勉強しようという気持ちは限りなくゼロであったのが、4つの区分の流れが進むに従い、自ら進んで勉強しようという気持ちが増えていき、統合的動機づけでは100%になります。これとは反対に、外的動機づけでは外からの働きかけによる勉強のみであったのが、外からの働きかけによる勉強は少なくなっていき、統合的動機づけは外からの働きかけはゼロになります。
こうした説明でも分かるように、勉強の理想としては統合的動機づけが最も良いように思われます。
また、内発的動機づけと外発的動機づけでは、勉強のモチベーションとしては内発的動機づけがよく、外発的動機づけは勉強のやる気を持続させないので悪いと広く考えられてきました。けれども、デシとライアンの外発的動機づけの4つの分類にもとづいた多くの研究と検証によって、外発的動機づけのうち、統合的動機づけや同一的動機づけは内発的動機づけよりも、勉強のモチベーションにとってずっと重要であるということが分かってきました。
さらに、統合的動機づけと同一的動機づけの比較でいうと、語学学習での勉強のモチベーションは、統合的動機づけの方が同一化的動機づけより効果が高く、偏差値の高い高校や大学に進学するための受験勉強では、同一化的調整のほうが、統合的動機づけよりも効果が高いのが分かってきました。
以上、述べたことをふまえてどんなモチベーションだと、勉強のやる気が高まるのか整理して見ましょう。

内発的動機づけ
新しい解き方や考え方を見つけるのが楽しいから
問題を解くことがおもしろいから
勉強することが楽しいから
難しい問題に挑戦することが楽しいから
統合的動機づけ
勉強するのは自分らしく自然なことだから
勉強するのは自分にとって毎日の生活の一部だから
同一化的動機づけ
自分の夢を実現させたいから
勉強をすることは大切なことだから
社会に役立つ人間になりたいから
希望する高校や大学に進学したいから
高い収入が得られる仕事に就きたいから
取り入れ的動機づけ
勉強ができないと惨めな気持ちになるから
勉強で友達に負けたくないから
周囲から賢い人間だと思われたいから
外的動機づけ
親や先生に叱られたくないから
勉強をするのはルールのようなものだから
良い成績をとれば欲しいものを買ってもらえるから
親や先生にほめられたいから

これらのモチベーションの中で、学校の勉強については、夢や目標を実現させるための手段として勉強を行う「同一化的調整」が最も良いようです。夢や目標がない人は、勉強をすることを習慣化し、自分の生活の一部となるように、勉強に親しむ努力をするといいでしょう。学校の勉強を離れて、真に学びたいという意欲を作りたい場合も、勉強を習慣化し、勉強に親しむことが良いです。
最後に、内発的動機づけが最もよい動機づけではないのかというと、好きだからやるというのは、飽きればやらなくなってしまう可能性があるということです。飽きてもやり続けることで、再び興味が沸くようになります。勉強とは継続も大切なことなのです。ですから、勉強への情熱という点では、内発的動機づけは高いのですが、継続して勉強を続けるという点では統合的動機づけの方が良いのです。